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一歩先をゆく魅せる「英語」

第14回 情報構造

第14回 情報構造
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第14回

情報構造

 前回は、個別センテンスを超えた複数のセンテンスの塊であるパラグラフの結束性について解説しました。具体的には〈論理接続語〉〈定冠詞〉や〈代名詞〉〈反復〉を用いたテクニックを紹介しました。今回は、〈情報構造〉の観点からパラグラフ間の結束性を解説します。

〈結束性〉の本質は既知から新規へ展開する〈情報構造〉にある

 そもそも、文書を作成する作業は複数のパラグラフを順序立てて追加して行く作業です。そして、パラグラフ間の〈結束性〉を高める基本は読み手にすでに紹介済みである〈既知〉の情報を確認しながら〈新規〉の情報へと進む流れにあります。先行する古い情報との関係性を常に確認しながら、ひとつひとつできるだけ丁寧に新たな情報を加えていくようにします。

 それでは、情報構造的に良い例と悪い例を比較してみましょう。実際にパラグラフを事例にすると長くなるので、センテンス間の関係において情報構造を紹介します。パラグラフ間のつながりを滑らかに展開するための情報構造のテクニックもこれと同じです。

悪い例1:
We invested in renewable energy and distributed power in the past decade. We have invested in businesses as robotics, bioengineering, and water processing.

 これでは最初と次のセンテンスの関係がまるで見えません。〈結束性〉の低い展開です。

第一改善例:
We invested in renewable energy and distributed power in the past decade. We have invested in businesses as robotics, bioengineering, and water processing along with these.

 この改善例では、最後にalong with theseと接続詞と指示代名詞を用いて〈結束性〉を高めようとする努力が見受けられます。ただし、この接続詞と指示代名詞が、新情報であるWe have invested in businesses as robotics, bioengineering, and water processingの後にきているのはよくありません。

 なぜなら、〈結束性〉を高める基本である読み手に紹介済みの〈既知〉情報を確認しながら、〈新規〉情報へと展開するという流れに反しているからです。
 さらなる改善としては、既知情報であるrenewable energy and distributed powerを指している末尾のtheseを、センテンスの始めに移動するとよいでしょう。接続詞のalong withもです。

   
第二改善例:
We invested in renewable energy and distributed power in the past decade. Along with these investments, we have also invested in businesses as robotics, bioengineering, and water processing.

 この改善例は、既知情報である第一センテンスで紹介済みの投資分野を、第二センテンスの冒頭において接続詞とともに引き継いだ上で新規情報を加えています。その際、指示形容詞を用いてthese investmentsとすることで、第一改善例の指示詞代名詞theseのみよりも反復性を高めています。

 また、we have also invested とalsoという副詞を用いることにより、既知情報との追加的な関係性をさらに表現しています。情報構造的に〈結束性〉の高い改善例です。

悪い例2:
As shown in the exhibit, the economy has continued contracting almost for the past 20-year period. The younger generation finds it hard to imagine what economic growth feels like.

 これも〈結束性〉の低い展開です。両センテンスの流れに飛躍感があります。第二センテンスthe younger generation finds it hard to imagineのitはto不定詞to imagineを指す、他動詞findの形式的な目的語ですから、第一センテンス中の何かを引き継いでいる代名詞ではありません。さらにいえば、仮に先行文の内容を受け入れたとしても、第二センテンスの根拠が定かでありません。

第一改善例:
As shown in the exhibit, the economy has continued contracting almost for the past 20-year period. The younger generation finds it hard to imagine what economic growth feels like because the recession lasted for such a long time.

 この改善例は、第二センテンスにbecause the recession lasted for such a long timeを加えることで、その根拠を明らかにしています。その根拠の内容は、第一センテンスの〈言い換え〉になっています。第一センテンスにある、for the past 20-year period をsuch a long time と言い換えました。

 確かに、経済の傾向上、20年というのはとても長いので違和感はないでしょう。しかし同時に、recessionという表現で第一センテンスを引き継いでもいます。第一センテンスにはrecession という具体的な表現はありませんでしたので、第二センテンスでにわかに出てくると、論理の飛躍感を招く唐突感をもたらしかねません。ひとつずつ丁寧に新情報を追加するという点では改善の余地がありそうです。

第二改善例:
As shown in the exhibit, the economy has continued contracting almost for the past 20-year period. Such a trend well constitutes a deep recession. The younger generation finds it hard to imagine what economic growth feels like because the recession lasted for such a long time.

 この改善例には、連結を強化するセンテンスが追加されています。まず、such a trendと第一センテンスの内容をa trendと〈抽象化〉を持って言い換えています。また、suchを指示形容詞として用いることで、先行センテンスを引き継いでいる旨を強調しています。同時に、このtrendがrecessionをなすという新規情報を加えています。

 この流れであれば、次にrecessionが登場しても読み手側にサプライズはないでしょう。しかし、まだ新たに加えた第二センテンスと第三センテンスとの情報構造に改善の余地があります。

第三改善例:
As shown in the exhibit, the economy has continued contracting almost for the past 20-year period. Such a trend well constitutes a deep recession. Because the recession lasted for such a long time, the younger generation finds it hard to imagine what economic growth feels like.

 第三改善例では、先行文の内容を含んだ副詞節を後行文の先頭に前出しすることで〈結束性〉を高めています。この流れであれば、読み手は苦労せずにフォローできるでしょう。

 以上、今回は、パラグラフ間の展開を滑らかにするための、読み手にすでに紹介済みである〈既知〉の情報を確認しながら、〈新規〉の情報へと進む情報構造のテクニックを解説しました。次回は、文書全体の基本構造を紹介します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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