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一歩先をゆく魅せる「英語」

第13回 パラグラフ内の結束性を高める

第13回 パラグラフ内の結束性を高める
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第13回

パラグラフ内の結束性を高める

 前回は、明瞭さと読み易さの観点から長い主部や目的語をセンテンスの後ろのほうに置く〈文末重心の原則〉を紹介しました。今回は、個別センテンスを超えた、複数のセンテンスの塊である〈パラグラフ〉の結束性について解説します。

センテンス間のつながりを意識する

 英語の勉強は一般的に、センテンスレベルでの構造を中心に行われます。しかし、実際のビジネスドキュメントは複数のセンテンスの流れによって構成されます。ですから、個別のセンテンス構造の明瞭さもさることながら、センテンス間のつながりもとても重要となります。その際、ひとつの重要な「塊」となるのがパラグラフ(段落)です。今回は、パラグラフ内のつながりである〈結束性〉を高めるテクニックを紹介します

〈結束性〉を確保する手法には次の3つがあります。

1)〈論理接続語〉(logical conjunctions)を用いる
2)〈定冠詞〉(definite articles)や〈代名詞〉(pronouns) を用いる
3)〈反復〉(repetition)する

〈結束性〉を向上させるにはつなぎ言葉を活用するとよい

 1)は、第8回で紹介した〈論理接続語〉を用いることにより、今度はセンテンス間の関係を明瞭にする手法です。〈論理接続語〉は平たく言えばつなぎ言葉です。〈論理接続語〉は文法上〈前置詞〉〈接続詞〉〈接続副詞〉の3種類に大別されます。

〈前置詞〉でつないだ例:
The research division was sold to the highest bidder. As for the manufacturing division, the board decided to keep it.(この例は「as fort」という郡前置詞を用いています)
〈接続語〉でつないだ例:
Hideyoshi Oda was a very competent CEO. But the company lost money due to the economic downturn.
〈接続副詞句〉でつないだ例:
The Consaba Industries rarely makes risky investments. In other words, The Consaba Industries is a very conservative company.

〈定冠詞〉や〈代名詞〉の活用も〈結束性〉の確保に有効

 〈論理接続語〉以外でセンテンスを連結させる手法に、2)の〈定冠詞〉を用いる手法と〈代名詞〉を用いる手法とがあります。先行する名詞や文を指示する形でつなげます。また、〈指示形容詞〉によるものもあります。これらも例文で確認しておきましょう。

〈定冠詞〉を用いた例:
Mr. Chowming, the head of the design department, made a change in specification. The change required a significant additional cost.
〈人称代名詞〉を用いた例:
Bill Jobs, our CEO, is a very innovative leader. He knows how to create new products that people want.
〈指示代名詞〉を用いた例:
Each day, our large-scale call center receives hundreds of inquiries. They come through our dedicated phone lines that are well secured.
センテンス全体を〈代名詞〉で引き継いだ例:
Lucra Corp. suddenly went bankrupt. It was an unexpected event.
〈指示形容詞〉を用いた例:
For the last ten years, KANNON INC. has made it compulsory for its high potential employees to receive instruction in logical writing. This practice has been the cornerstone of KANNON INC’s leadership development efforts.

〈反復〉も〈結束性〉向上に有効

 3)の〈反復〉も〈結束性〉の向上に有効です。〈反復〉には、〈文字通りの反復〉、〈言い換え〉、〈同義語〉を用いるやり方があります。こちらも具体例で確認しておきましょう。

〈文字通りの反復〉の例:
A petrochemical company uses scenario planning to reduce the uncertainty to a set of manageable scenarios. The originating point to reduce uncertainty is having a good handle on the demand forecast for the next few years.

 〈文字通りの反復〉は、最も誤解の少ない手法です。ただし、反復部分が長くなると冗長になる場合もあります。

〈言い換え〉の例:
Organizations increasingly give their employees opportunities to participate in off-site training. Most such out-of-office programs have generated warm support from employees.

〈言い換え〉であれば、〈文字通りの反復〉にありがちな冗長さを払拭することが可能となります。ただし、換えすぎると〈言い換え〉であることが読み手に理解してもらえなくなる危険があります。この例文では、out-of-office programsという言い換えにsuchという指示形容詞を用いることで、先行するoff-site trainingと同じ意味である旨を示唆しています。

〈同義語〉の例:
Leaders extrapolate different possible outcomes into the future. As leaders anticipate the future, the challenge is to overcome a tendency to think that it will be the same as the past.

〈同義語〉を用いた連結も一種の言い換えですから、反復にともなう冗長さの心配はありません。しかし、書き手の意図した同義語に読み手が気づいてくれない懸念もないわけではありません。想定される読み手の語彙力も考慮した上で使うとよいでしょう。

今回は、個別センテンスを超えた、複数のセンテンスの塊である〈パラグラフ〉の結束性について解説しました。次回は、パラグラフ間のつながりをスムーズにする情報構造を解説します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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