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一歩先をゆく魅せる「英語」

第12回 後方重心型センテンスの薦め

第12回 後方重心型センテンスの薦め
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第12回

後方重心型センテンスの薦め

 前回は、形容詞句や副詞句など基本文型以外の語順を解説しました。今回は、明瞭さと読みやすさの観点から〈文末重心の原則〉を紹介します。長い主部や目的語をセンテンスの後ろの方に置く原則です。こちらも広い意味での語順といえます。

長い説明を後方に回す〈文末重心の原則〉を重んじる

 明瞭さと読みやすさの観点から、〈文末重心の原則〉を紹介します。長い、したがって重い印象を与える、主語や目的語をセンテンスの後ろのほうにもってくるべしという原則です。なぜなら、文頭に長い表現をもってくると、読み手の短期記憶のキャパを超えてしまうため、理解しづらくなるからです。
 いくつか、〈文頭重心〉型のセンテンスの改善を試みてみましょう。

悪い例1 長い主語:
The fact that many executives who joined the company had to relearn their leadership skills from scratch in order to be effective in their new positions / is / quite unfortunate.

 この例文はSVCという基本文型です。しかし、その主部があまりにも長すぎるため、VC部分に到達するまで短期記憶が続きません。その結果、とても読みづらいセンテンスになっています。

改善例〈文末重心〉:
It is quite unfortunate / that many executives who joined the company had to relearn their leadership skills from scratch in order to be effective in their new positions.

 典型的な改善の手法としては、〈形式主語〉であるitを用いて、基本文型のSVCをセンテンスの冒頭に端的にもってきます。その後に〈真主語〉のthat節をもってきます。もっとも、そもそも真主語自体が長いのでその部分の難しさは残ります。しかし、原文よりも理解しやすくなります。

悪い例2 長い主語:
Many CEOs / who believe erroneously that having no debt is a virtue / exist.

 悪い例1と同様にこの例文の主部も長すぎます。基本文型はSVです。しかし、重めの関係節に阻まれ、Sのmany CEOからVのexistに到達するまでの道のりがかなり長くなっています。〈文末重心の原則〉に従えば、

改善例〈文末重心〉:
There are many CEOs / who believe erroneously that having no debt is a true virtue.

 この改善例は、thereを用いた所謂〈存在文〉です。これも〈文末重心〉を確保するために頻繁に用いられる手法です。CEOに関する重い説明を後回しにしています。

悪い例3 長い目的語:
The CFO explained / the complicated accounting procedure of the ongoing merger in North America and in Asia / to the investors.

 この文型はSVOAです。ですが、Oのprocedureが前後に複数の修飾語を伴っているため、説明した相手のto the investorsに到達するまでが長くなっています。典型的な〈文頭重心〉型になっています。

改善例〈文末重心〉:
The CFO explained / to the investors / the complicated accounting procedure of the ongoing merger in North America and in Asia.
 

 Aであるto the investorsを前だしすることで、長い目的語を後方に移しました。この様にSVOAにおいてOが長い場合、SVAOにする形で改善できます。

 

 同様に、SVOC型の文型も、Oが長い場合にはSVCOに変形させることで、〈文末重心〉を確保することができます。例えば例として、

SVOC: The consultants / found / the lack of any kind of strategic thinking even within the top management group / very serious.
SVCO: The consultants/ found / very serious / the lack of any kind of strategic thinking even within the top management group.

 以上、広い意味での語順ともいえる〈文末重心の原則〉を解説しました。次回は個別センテンスを超えた、複数のセンテンスの塊である〈パラグラフ〉の結束性について解説します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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