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一歩先をゆく魅せる「英語」

第10回 基本文型を意識する

第10回 基本文型を意識する
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第10回

基本文型を意識する

 前回は特に日本語話者として、英語の語順を意識する重要性を解説しました。今回は、具体的に英語の基本文型について解説します。文型の理解はドキュメント作成のみならず、リーディングやスピーキングにも、とても役立ちます。

SV文型:

North American sales / declined.
The fourth-quarter receivables / increased.
ABC Industries / failed.

 これらは、述部が〈述語動詞〉のみによって成り立っています。文型としては最もシンプルですが、実際には長めの句や節を含む諸々の修飾語を伴うことが多いため、文全体としてはかなり長くなる場合があります。述語動詞として用いられる動詞は、目的語を伴わない〈自動詞〉です。

SVA文型:

My parents / live / in Yokohama.
The lawsuit / went / to the district court.
My office / opens / at 7 a.m. every morning.

 従来の5文型分類からすると、この文は第1文型SVに分類されます。なぜならin Yokohamaはliveという動詞を修飾する前置詞と名詞からなる副詞類なので、文を構成する重要な要素ではないと解釈されるからです。
 しかしMy parents live. だけですとどうもメッセージとして座りがよくありません。読み手の心理は落ち着きませんね。in Yokohamaという追加情報があって、やっとメッセージとしてしっくりします。
 つまり、この場合のAは文構造上の必須の要素であるので、「省略できる修飾類」とは考え辛いのです。従って、in Yokohama を義務的な副詞類 (obligatory adverbial) のAと扱って、My parents live in Yokohama. をSVA文型として捉えるというものです。
もっとも、何が義務的かには議論の余地があるので、副詞類を広く修飾類としてM (modifier) と表示する考え方もあります。SVMという文型です。

SVC文型:

Stock prices / are / down.
The production schedule / appears / too tight.
Their sales forecast / sounds / very optimistic.

 このタイプでは、述部が〈述語動詞〉と、〈主格補語〉である形容詞または(代)名詞によって構成されます。S=Cという関係です。ここでのVはbe動詞を始めとした連結動詞です。代表的な動詞としては、sound、look、feel、smellなどの知覚動詞、come、become、growやstay、keep、 remainなどです。SV同様、実際の文はもっと長くなるのが一般的です。

SVO文型:

The board / hired / a new CEO.
XYZ Inc. / acquired / ABC Industries.
BCD Ltd. / liquidated / its retail business.

 SVOでは、述部が、〈述語動詞〉と〈目的語〉である(代)名詞によって構成されます。ここでの目的語は、誰々を、何々をという〈直接目的語〉です。このように、この文型の〈述語動詞〉の動詞は目的語をとる〈他動詞〉が使われます。Oを含む他の文型においてもそうです。主語が他動詞を介して目的語に働きかける構造です。S≠Oという関係です。

SVOO文型:

The board / gave / the CEO / an ultimatum.
This project / offers / young professionals / a great learning experience.
A securities analyst / asked / the CFO / a difficult question.

 この文型では、述部が〈動詞〉⇒〈間接目的語〉⇒〈直接目的語〉の順に構成されます。あくまでも、〈間接目的語〉が先です。〈〜に〉⇒〈〜を〉の順です。逆にしたい場合は、第3文型のSVOにした上で、間接目的語にto、for、ofなどの前置詞をつけて修飾句として表します。

SVOA文型:

 上でSVOOを紹介した際、最初に来る間接目的語を、前置詞を付けて最後に持ってくることもできると解説しました。伝統的な5文型分類に従うと、その際はSVOになります。

SVOO:The board / gave / the CEO / an ultimatum.
SVO:The board / gave / an ultimatum / (to the CEO).

 語順の違いからくる微妙なニュアンスの変化はあるとしても、これらの意味は基本同じです。
 しかし、the CEOにtoという前置詞が付いただけでthe CEOの文法上の位置付けは、文の要素として高い間接目的語から、giveを修飾する文法的に重要度のより低い副詞類に「格下げ」されてしまいました。その結果、伝統文型的解釈では文の基本構造としてはカウントされなくなってしまいました。
 しかし、メッセージの明瞭さという実質的な重要度にはなにも違いはないにも関わらず、文法的な位置付けの変化によって文の構成要素から排除されてしまうのもおかしな話しです。そもそも、SVOのThe board gave an ultimatum. のみですと読み手の心理は落着くでしょうか? ほとんどの読み手は「誰に?」と疑問に思うことでしょう。
 The board gave an ultimatum to the CEO. におけるto the CEOは、文のメッセージを完結させるために必要な副詞類として解釈できます。そうであれば、義務的副詞類A として文の重要な構成要素として認識するほうが自然です。ここに、SVOAという文型が成立する背景があります。

SVOA:The board / gave / an ultimatum / to the CEO.

SVOC文型:

The board / elected / John / president
The new dividend policy / made / the shareholders / very happy.
Most sales people / considered / the monthly target figure / too high.

 SVOCでは、述部が〈述語動詞〉⇒〈目的語〉⇒〈目的格補語〉の順によって構成されます。ここでの目的語は、誰々を、何々をという〈直接目的語〉です。また、CはOの補語ですので、O=Cという関係が成り立ちます。

 「文法は苦手だ」と感じていらっしゃる方も、これら基本文型はしっかりと身に付けることが大切です。次回は、形容詞句や副詞句など基本文型以外の語順を解説します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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