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一歩先をゆく魅せる「英語」

第9回 語順の意識を高める

第9回 語順の意識を高める
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第9回

語順の意識を高める

 前回はメッセージ(文)を明瞭につなげる重要性を解説しました。だだし、それはつなげようとしているメッセージがそもそも文として構造的に正しいことを前提にしています。今回は、英語の基本文型について解説します。

語順の基本は文型にある

 英語でのメッセージを明瞭に表現するために忘れてならないのが、明確な〈文型〉です。文型とは、文における〈語順〉の基本型です。英語では、主部が前にくるので、文型とは文後半の述部の順序であると言えます。私たち日本語話者にとって文型を意識することは特に重要です。なぜなら、論理接続もさることながら、文型の意識も一般的に低いからです。

 なぜ低いかと言えば、日本語には「は」「が」「の」「に」「を」など〈格助詞〉があるので、文中の語順を比較的柔軟的に入れ換えることができるからです。言語学の分類では、日本語は〈膠着(こうちゃく)語〉に分類されます。語彙の末尾に格助詞を「くっつける」ことで、格を表すことが可能となります。ですから、語彙を文中のどこに置いても文法的に意味を成すことができます。

 例えば、

我々高杉物産は/従業員に/多くの特典を/与えている。

従業員に/我々高杉物産は/多くの特典を/与えている。

にもできます。

多くの特典を/我々高杉物産は/従業員に/与えている。

としても意味を成します。便利です。

 このように格助詞の存在は、語順を自由に変えられるメリットがあります。しかし同時に、語順の意識を弱める方向にも働きます。

 変わって、ご存知のように英語は、文中における語彙の順番によって文法上の意味付けが決まります。ですから、語順のルールに則していなければ、文は意味を成さなくなってしまいます。例えば、もし、

We at Takasugi Bussan /provide /its employees /a lot of benefits.

Its employees /we at Takasugi Bussan/ provide/ a lot of benefits.

としたり、

A lot of benefits/ we at Takasugi Bussan/ provide/ its employees.

とすると意味が通らなくなります。

 さらに、I、my、meのように、英語は代名詞自体が格によって変形します。ただし、代名詞自体を文法に従って変形しても、語順のルールに則していなければ、やはり意味を成さなくなってしまいます。英語は語順重視の言語なのです。

 ”He loves her.” を ”Her loves he.” にはできないのです。

基本文型は7つある

 英文での語順を意識するという作業は、文型を意識することに他なりません。英文では、詩的な倒置を除けば、ほぼ必ず主語(部)が最初にきます。ですから、文型というのは主語(部)以外、つまり述部を構成する語句の順序を表しています。

 文型というと、即座にSV、SVC、SVO、SVOO、SVOCの5文型を思い出す方がほとんどではないでしょうか。現在でも、学校ではこれら5文型が教えられています。5文型の由来は、1904年にオックスフォード大学の語源学者C.T. Onionsの発表した “An advanced English Syntax”にあるというのが定説です。そこでは、述部の形式として5つあることが記されています。

 しかし、すでに100年以上の時を経て、現在はロンドン大学のR. Quirkの提唱する文型を7つと捉える考え方が一般的になっています。先の5文型に、A (obligatory adverbial、義務的な副詞類)を加えたSVAとSVOAを含む7文型の方がより実践的です。

 このシリーズで文型の解説をする目的は、受験英語のように文型を特定する作業自体にあるのではりません。あくまでも語順の感覚を磨くところにあることを強調しておきたく思います。

文の要素と品詞を理解しておく

 おさらいしておくと、上記文の要素「S・V・O・C・A」は、それぞれの文中での役割の分類です。

S(subject主語)=文の中心となる動作主や主題を表す

V(predicate verb述語動詞)=主語の状態や動作を表す

O(object目的語)=動詞の働きを受ける対象。間接目的語と直接目的語がある

C(complement補語)=SまたはOを補足的に説明。主格補語と目的補語がある

A (obligatory adverbial義務的な副詞類)=厳密には文の要素ではないものの、それが欠けると文の意味が不明瞭になる副詞語句

 なお、文の要素は下記の特定の品詞によって構成されます。

S(主語):名詞(句)または代名詞(句)

V(述語動詞):動詞(句)

O(目的語):名詞(句)または代名詞(句)

C(補語):名詞(句)または形容詞(句)

A (義務的な副詞類):名詞句、前置詞句、副詞節など

 次回は、これら7文型を具体的に解説いたします。これらをしっかりと理解することは、ドキュメント・ライティングはもとより、スピーキング、リスニング、リーディングすべてに有益となります。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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