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一歩先をゆく魅せる「英語」

第8回 接続の重要性

第8回 接続の重要性
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第8回

接続の重要性

 今回は、メッセージをうまく接続する重要性について解説します。個々のメッセージが明瞭であっても、それらがうまくつながっていないと読み手に大きな負担を掛けるとともに、彼らの勝手な解釈を促してしまいます。

論理的な接続語は明瞭表現の大切な要素

 グローバルビジネスでの異なる世界観をもつ読み手を想定した文書作成においては、〈論理接続語〉を用いることにより、メッセージ間のつながりを明確にする手続きがとても大切です。とりわけ日本語話者は、日本語のドキュメントにおいて「あり」や「おり」に代表される複数の解釈が可能な〈曖昧接続語〉に慣れ切っています。「が」「き」「し」「く」「ず」「で」などにもです。

 確かに、世界観を共有している読み手であれば、断片的な個別情報を並べるだけで書き手と同様の関係性を読み取ってくれるかもれません。しかし、書き手の期待する特定の解釈を読み手に委ねるのは、グローバルビジネスではとても危険です。理解のしやすさと誤解の排除の両方から、論理展開の筋道をしっかりと表す必要があります。その具体的な手続きが論理接続語の活用にあります。

 そもそも、論理接続の意識の薄い日本語話者が、英語で読み手に理解されやすい論理を展開するのは簡単ではありません。ここでは、明瞭表現という観点からメッセージ間のつながりを表す〈論理接続語〉について解説します。

論理接続語は前後関係を明瞭にするシンボル

 ここでいう接続語は、becauseやwhileなど、文法上の〈接続詞〉(conjunction)に限定されません。

due to, except for, by means of

 などのような前置詞句、

nevertheless, similarly, for example, in addition, as a result

 などのような副詞や副詞句を含む、関係性を表す幅広いつなぎ言葉を指します。論理接続後は、前後関係を明瞭に示すシンボルにほかなりません。

 論理接続語を大きく以下の3つの関係性に分類して解説します。
1)〈conjunctive〉(順接付加)、
2)〈argumentative〉(順接論証)、
3)〈adversative〉(逆接)

 並列的に情報を付加する

 まず(1)〈conjunctive〉(順接付加)グループの接続語は、因果関係と逆接以外の何かしらの追加的な関係を表します。

〈additive〉(追加):and, also, in addition, further, moreover, not only
〈contrast〉(対比):on the other hand, at the same time
〈explanatory〉(解説):namely, for example, in fact, in short, to summarize
〈conditional〉(条件):if, otherwise, hypothetically, if so, in such (a) case(s)
〈selective〉(選択):or, rather, instead, preferably, else, otherwise

 何かしらの因果関係を表す

 次の(2)〈argumentative〉(順接論証)グループは、何かしらの因果関係を表しています。

〈causal〉(理由):because, for, as , due to, since, now that, owing to
〈conclusive〉(帰結):thus, therefore, so, consequently, as a result
〈methodological〉(手段):by, by doing so, by way of , through
〈purposive〉(目的):in order to, so as to, for the purpose of, so that

 逆説的な展開を表す

 最後の (3)〈adversative〉(逆接)グループは、先行するメッセージに反する展開を表します。

〈contradictory〉(反転):but, however, in spite of, despite, nevertheless
〈restrictive〉(制限):though, still, although, having said (that), even if
〈concessive〉(譲歩):of course, indeed, undoubtedly, while it may be true
〈diversion〉(転換):by the way, anyway, be that as it may, incidentally

 もちろん、上記がすべてではありません。論理接続語は他にも多くあります。これらはあくまでもほんの一部です。ガイドラインとしてご理解ください。

明瞭な接続は書き手の責任

 英語であれ日本語であれ、内容を書き手がしっかりと理解できていないと、正しく論理接続することはできません。したがって、論理接続を重視する姿勢は、書き手自身の内容理解にも貢献します。つまり、しっかりと論理接続する姿勢は書き手が自分の内容理解度をチェックするという観点からも重要なのです。自分自身がしっかりと理解している内容を発信するのは書き手の責任です。

情報構造(information structure)も流れを左右する大切な要因

 メッセージ間のつながりは、接続語だけに限りません。これらに加え、読み手の理解を促す話しの〈流れ〉(flow)になっているかどうかも重要な要件です。その基本は、〈既知〉(given)の情報を確認しながら、〈新規〉(new)の情報へと展開するという流れです。これは、ひとつの文中、そしてまた文と文とのつながりの両方に共通する要件です。個別の接続表現を超えた、この〈既知〉情報の確認から、〈新規〉情報へという流れは、情報構造(information structure)と呼ばれます。

 接続に加え、英語でのメッセージを明瞭に表現するために忘れてならないのが明確な〈文型〉です。文型とは平たく言えば、文の中の〈語順〉の基本型です。実は、接続に加え、日本語話者にとってこちらも厄介な課題です。次回はこの基本文型について解説します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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