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一歩先をゆく魅せる「英語」

第6回 メッセージと釣り合いのとれたテーマを設定する

第6回 メッセージと釣り合いのとれたテーマを設定する
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第6回

メッセージと釣り合いのとれたテーマを設定する

 前回のメッセージの概念に続き、今回はメッセージの入る器である〈テーマ〉について解説します。明瞭かつ、伝わりやすいドキュメントは、テーマとメッセージの釣り合いのとれたデザインになっています。

テーマとはメッセージの入る器

 明瞭な表現という点で、しっかりと理解しておきたい概念に〈テーマ〉があります。〈テーマ〉とは、メッセージの入る〈器〉です。メッセージの〈展開領領域〉を規定します。一般的に、中味であるメッセージに気を取られすぎて、入れ物であるテーマの意識が弱くなる傾向があります。両方ともとても大切です。テーマとメッセージのフィット感はドキュメントの品質を担保する上でとても重要です。例えば、

Our firm’s competitive advantage

は〈テーマ〉です。変わって、

We are at the forefront of educational research

は、その中に入るうるメッセージのひとつです。

 メッセージは、主語と述語によってなる〈文〉でした。他方、〈テーマ〉は、名詞です。ほとんどの場合、複数の形容詞の付いた名詞句になります。テーマを器に張られたラベルと考えるとよいでしょう。

テーマとメッセージの釣り合いに気を配る

 テーマとメッセージの釣り合いを意識することが、ドキュメント作成において大切です。両者の分量や形の釣り合いがとれていると、読み手はストレスなく内容を理解できます。テーマとメッセージとのミスマッチのタイプを3つに分けることができます。

 スカスカタイプ:大きなテーマの中に少しのメッセージ。
反対に、
 あふれ出しタイプ:小さなテーマにメッセージの入れすぎ。
そして、
 種類ミスマッチタイプ:そもそもテーマとメッセージの種類が合わない。

 まず、(1)の大きなテーマの中に少しのメッセージしか入っていないスカスカタイプ。例えば、Our current marketing strategy とのテーマを設定したとします。

 そのテーマの中味として、

We are increasing our TV advertising budget by 15% vs. last year. Secondly, our public relations group has been reinforced with two additional members. Furthermore, we have also started coupon distribution in our major markets. Lastly, our personal sales team has received an intensive training.

などのメッセージが入っていたとします。

 確かに、これらはmarketing strategyとのテーマと矛盾はしません。しかし、これらはすべてmarketing の一分野であるpromotion のみに関するメッセージです。marketing strategy について語るのであれば、他にも中味としてproduct、 pricing、place strategyをも語ることが求められます。 この例では、テーマの大きさと較べると、メッセージによるカバレッジが少なすぎるのです。これは、文字数の少なさの問題ではありません。あくまでも、マーケティングという入れ物の領域との兼合いにおいて、中味のメッセージがカバーしている範囲が足りないのです。

 他方、(2)はこの反対での小さなテーマにメッセージを入れすぎてしまい、結果、中味があふれ出してしまうタイプです。例えばproduct strategyというテーマ設定の中に、 pricing strategyや place strategyについてのメッセージが入っている場合などです。これら(1)と(2)は、言わば入れ物と中味の分量的なミスマッチといえます。

 変わって、(3)のミスマッチは、例えば、The importance of hiring talented peopleというテーマの中に、We should hire talented people and compensate them accordingly.などという〈規範〉メッセージを入れてしまうようなケースです。テーマすなわちメッセージの展開領域として、あくまでも importanceを語るのですから、その中に入るメッセージの種類は例えば、Our employees are critical for our continued successなどの〈記述〉メッセージが適切です。

テーマの広さは表現の抽象レベルによって決まる

 (3)のような種類ミスマッチの場合、もしテーマを変えずにそれに中味を合わせるのであれば、上記のような〈記述〉メッセージを中味にします。反対に、当初の中味であったWe should hire talented people and compensate them accordingly.との規範メッセージに、〈テーマ〉の方を合わせるのであれば、proposal to hire and retain talented peopleとすると良いわけです。proposalやrecommendationという〈形〉のテーマにすれば、中に〈規範〉メッセージを首尾よく入れることができます。

 (1)と(2)のようなミスマッチの場合は、テーマに合うように中味の分量を調整するか、またはテーマの大きさを調整することで入れ物と中味の釣り合いをとる修正が求められます。
 この、テーマの大きさを調整するのは、表現の〈抽象度〉を調整する作業にほかなりません。表現が〈抽象的〉であればあるほど、テーマとして広くなります。反対に、〈具体的〉であればあるほど、狭くなります。抽象度を上手に操るスキルは、ドキュメント作成において大切な要素技術のひとつです。

 このように、テーマはメッセージとともに重要な概念です。次回は、抽象度を調整する〈抽象化〉の技術について解説します。〈抽象化〉のスキルは明瞭な表現に大きく影響する大切な要素技術のひとつです。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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