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一歩先をゆく魅せる「英語」

第3回 ドキュメントスタイルへの意味合い

第3回 ドキュメントスタイルへの意味合い
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第3回

ドキュメントスタイルへの意味合い

 前回は、東西世界観の違いが英語の言語構造にどのような影響を及ぼしているのかを解析しました。今回は、世界観の違いからくる言語構造の特徴が、ドキュメント作成においてどのような姿勢として表れるかを解説します。

 英語的なドキュメントは明示・説得的

 世の中を理解する際に、個別の対象物を分析的に追求しようとする世界観においては、対象となる状況をできるだけ、〈個-集合〉的な見方を基本として体系的に整理しようとします。従って、ドキュメント作成の基本姿勢としても、できるだけ個々の要素を形容詞と名詞を駆使しながら他の要素とだぶらないように明瞭に区別しようとします。その上で、個別の要素の集合が全体をしっかりともれなく網羅しているかに注意を払います。つまり、できるだけ〈体系化された構造〉を目指そうとします。

 さらに、脱文脈化傾向をもつ世界観においては、センテンスレベルでもそうであったように、細かな文脈の説明の前に、まず結論を伝えます。例えば、「こういう状態にある」という描写的なメッセージの場合、抽象化された状況の本質を結論として最初に提示します。その上で、具体的な情報を提示する形で全体を肉付けする流れをとります。変わって、「こうすべき」という提案的なドキュメントであれば、文脈抜きに、先ず結論としてのアクションを提示します。

 このように、英語的なドキュメントはスタイルとして明示・説得的となります。対照的に、日本語的ドキュメントは、特定の文脈を中心とした〈暗示・示唆的〉スタイルが主流です。

 英語は書き手責任、日本語は読み手依存

 この違いは、情報伝達における責任所在の違いにつながります。英語的なドキュメントには、書き手側に読み手を説得するという責任があります。書き手は、特定の場に縛られない、個人的な想いを排除した脱文脈的、客観的な分析を基に、体系的に普遍的な妥当性のあるものごとの本質を明示しようとします。

 変わって、日本語的なドキュメントは、読み手側に解釈を任せます。そこでは、内容を適切に理解する責任は、読み手側にあると考えます。書き手は、想定されたある特定の場において、諸々の個人的な想いを織り込みながらメリハリのある部分的な情報を非対称的、非線的に表します。読み手は創造力を結集して、書き手に感情移入しながら、書き手同様、読み手自身も場に溶け込むことによって、直感的、包括的な理解を追求しながら、書き手の暗示している心情を感じとろうとします。

 グローバルビジネスでの文書作成の基本は明示・説得型がよい

 それでは、英語でのドキュメント作成ではどのようなスタイルが適切と考えるとよいでしょうか。結論からいえば、それは明示・説得的になります。なぜなら、そもそも、ビジネスにおけるドキュメントの目的が書き手の望む行動を読み手に実施してもらうところにあるからです。無論、すべてのドキュメントが提案書であるとは限りません。しかし、いろいろな段階はあるとしても最終的には、何かしらの〈行動を読み手に実施してもらう〉ところをドキュメント作成の目的と考える際、その基本スタイルは説得的となります。

 さらに、そのスタイルは明示的でもあります。とりわけグローバルビジネスを想定する場合、書き手と読み手が異なる文化的背景や商習慣をもつことが普通です。従って、ものごとに対する両者のイメージ、評価基準、価値観、行動原理などに大きな差があると想定できます。

 そのような状況の下、暗示的な表現によって、読み手に婉曲的に理解を得ようとしたり、とって欲しい行動を察知してもらおうとしたりする読み手依存型のドキュメントスタイルはとても危険です。書き手には、読み手の誤解や勝手な解釈をできるだけ排除する努力が求められます。グローバルビジネス環境においては、明示的なスタイルが求められるのです。

 次回は、日英の根本的なドキュメント作成のアプローチの違いを意識しながら、両者の相乗効果を目指す姿勢を解説します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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