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一歩先をゆく魅せる「英語」

第2回 西洋的世界観を反映した英語の特徴

第2回 西洋的世界観を反映した英語の特徴
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第2回

西洋的世界観を反映した英語の特徴

 前回は、西洋的な世界観と東洋的な世界観との根本的な違いを確認しました。今回は、西洋的な世界観が英語にどう反映されているのかを紹介します。背景にある世界観から来る言語の特徴を理解することにより、グローバルに通じるドキュメント作成能力を格段に向上できます。 ビジネスパーソンのキャリアアップに大きく貢献する要因となりますが、その理解に欠けてしまうとドキュメントを作成するうえで、応用が利かなくなってしまいます。

 英語は名詞、とりわけ主語を重視する

 第一の特徴は、個別の対象物に注意を向ける世界観をベースとする英語が、〈名詞〉を重視する点です。対象物は名詞として認識されます。そして、文の中で最も大切な対象物=名詞は〈主語〉です。例えば、“It’s a fine day. ”と、英語は架空であっても主語を入れます。
 他方、日本語は特定の〈場〉の設定において推論できる範囲であれば、特別な意味をもたせる場合を除いて主語を省略します。推論できる範囲であれば、日本語では目的語でさえ省略します。“I love you.”と「好きです」の違いです。

 英語は主語の主体性を重んじる言語である

 第二の特徴は、〈主体性〉を重んじる英語は、主語が強い〈他動性〉を発揮する言語である点です。これは、主語である〈動作主〉が〈動詞〉を介して積極的に〈目的語〉に影響を及ぼすことを意味します。
 例えば、日本語で、「象の鼻は長い」と存在を表す表現になるところ、英語ではAn elephant has a long trunk.となります。主語としての象が己の鼻を「持つ」、つまり、自らの支配下に置くとの表現は象が鼻に対する強い影響度と積極性を表しています。


 英語は名詞を細かく分類する

 第三の特徴は、名詞を細かく分類する点です。前述の様に、西洋的な世界観では対象物の名前である名詞を重視する傾向が強まります。そして、対象物を共通の本質に基づいて〈分類〉することが世の中の理解につながると考えることから、〈個-集合〉を基本としたまとめ方を重視します。
 これは、〈個-集合〉の枠組みの中で、名詞を厳密に整理する手続きにつながります。具体的には、名詞が、不特定単数か(an employee)、特定単数か (the employee)、特定複数か(the employees)、一般的な分類的名詞か (employees)であるのかを明確に分類します。

 英語は他品詞の名詞化を好む

 第四の特徴は、〈名詞化〉を好む点です。英語は、動詞や形容詞をも名詞に変形してしまう〈名詞化〉の得意な言語です。例えば、Anita is a great presenterなどの表現はごく自然な英語表現です。動詞のpresentがpresenterとい名詞に化けています。
 日本語であれば、「アニタさんは優れたプレゼン者だ」とは言いません。他にも、information, ownership, approvalなど、例は数多くあります。これらのもとは動詞です。他にto不定詞や、〜ing形式の〈動名詞〉による動詞の名詞化もあります。

 英語は結論を先行させる

 第五の特徴は、英語が結論を先行させる傾向です。物事の本質を文脈から切り離して捉えようとする西洋的な姿勢は、文の本質である結論(主語と動詞)を先に伝える文構造に反映されます。
 以下の例文で見てみましょう。


X sold its subsidiary in Japan last year with a help of a European investment bank in order to streamline its Asian operation.

昨年、日本にて欧州系の投資銀行の助けを借り、アジア地域の事業を合理化するため、X社は子会社を売却した。

 日本語とは対照的に、まず最も伝えたい結論のX sold its subsidiaryが先行します。その後に、個別文脈の説明が出てきます。このスタイルはのちに解説する、文書全体の構造にも当てはまります。
 結論を先行させ、かつ文脈を後回しにする姿勢は、みなさんご存知の〈関係詞〉を生み出しました。そこでは、まずは結論、つまり脱文脈化された本質を提示します。その上で細かい文脈を加えます。関係詞があるので、本質と文脈の説明を一文で表現できるのです。  

 次回は、世界観の違いからくる言語の特徴が、ドキュメント作成においてどのような姿勢として表れるかを見ていきます。


高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


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