日経キャリアNET

ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

一歩先をゆく魅せる「英語」

第1回 東西の世界観の違いに見えてくる言語の特徴

第1回 東西の世界観の違いに見えてくる言語の特徴
 大手を先陣として、企業のグローバル化は急ピッチで進んでいます。急激に変化するビジネス環境においてキャリアを構築していくうえで、ビジネスパーソンには様々なビジネスシーンで、英語によるビジネスドキュメントを作成するスキルの向上が求められるようになっています。中途採用でも社会人経験が豊富な方を中心に、求めるレベルの差はあるものの語学力(特に英語)を必須項目に挙げる企業が増えています。
 このコラムでは、グローバル化が押し寄せているなかで一歩先をゆくビジネスパーソンとして、英語を駆使して世界標準のビジネスドキュメントを作成するための重要なポイントを解説していきます。
第一回

東西の世界観の違いに見えてくる言語の特徴

 英語によるドキュメントの作成技術の解説に先立ち、西洋的な世界観と東洋的な世界観との対比を通じて、まずは英語という言語の特徴を紹介します。第1回は、2つの世界観の違いに焦点を当てます。

背景にある世界観の理解は、言語の理解に有益

 英語でのドキュメント作成スキルを学ぶ上で、英語の背景にある西洋的な〈世界観〉、を知っておくことは有益です。なぜかといえば、背景としての世界観は言語の構造に反映されるからです。
 英語の世界観を理解することによって、英語の構造的な特徴の理解を深めることができるのです。これは、英語自体の習得とドキュメント作成の両方に有益です。以下、両者の5つの相違点を紹介します。

 西は〈独立的な対象物〉、東は〈連続的な実体〉に注目する

 西洋的な世界観では、周囲から切り離された個別のモノ、つまり〈独立的な対象物〉によって世界は成り立っていると考えられています。そこでは、自ずと個々の物体へと観察の焦点が向かいます。言語的には物の名前である〈名詞〉を重視する傾向が強まります。
 他方、東洋的な世界観においては〈連続的な実体〉として世界は成り立っていると考えられています。世の中はお互いに複雑にからみ合っている素材の〈総体〉として解釈されます。そうなると、観察の焦点は部分と部分、また部分と全体との具体的な〈関係性〉となります。関係性は〈動詞〉に表されることから、言語的には、〈動詞〉を重視する傾向が強まります。

 西は〈要素還元主義的〉、東は〈包括的〉なアプローチをとる

 西洋においては、観察の焦点は単独の対象物となる傾向が強くなるため、ものごとをできるだけ細かく切り刻んで捉えようとする〈分析的〉な姿勢が促されます。結果として〈要素還元主義的〉 な発想が強くなります。
 具体的で複雑な〈関係性〉を重視する東洋においては、対象物を含んだ環境全体を〈包括的〉に把握することが大切になります。真の理解は直感的、感覚的であると考えます。

  西は〈個-集合〉、東は〈部分と全体〉を基盤に世の中を整理する

 西洋は、独立した対象物からさらに切り離すことができ、変わることのない共通の〈本質〉によって対象物が成り立っていると考えます。そして、それら抽象的な本質を基に対象物を〈分類〉することが、世の中の理解につながると考えます。従って〈個-集合〉関係を通して世の中を整理しようとします。
 東洋は、孤立した対象物のもつ本質ではなく、ものごとの関係性を重視することから〈部分と全体〉という区分を重視します。それは、具体的な関係性を表す特定の文脈である〈場〉を重視する姿勢につながります。


 西は〈脱文脈化〉、東は〈文脈化〉を好む

 上記の通り、西洋的な世界観では〈独立的な対象物〉によって世界は成り立っていると考えられていて、また具体的な対象物から切り離すことができる抽象的な〈本質〉が存在すると考えます。従って、ものごとの本質を理解するためには、対象物を特定の文脈から切り離す〈脱文脈化〉する手続きが大切となります。この姿勢は〈普遍的な法則〉を考えようとする〈モデル化〉につながります。科学が西洋で発達したゆえんといえます。
 対照的に東洋では、ものごとはお互い複雑に影響し合っていると捉えていることから、特定の〈場〉における関係性を重視します。これは、具体的な〈文脈化〉の重視を意味します。特定の文脈のなかにこそ〈現実〉があると考えます。ですから抽象的な学問よりも現場における実学を重視します。

 自己の概念に対する意識が西は〈強く〉、東は〈弱い〉

 世の中は独立的、かつ抽象的で普遍的な本質をもつ対象物によって成り立つという西洋的な世界観に基づくなら、〈自分〉という対象物の、特定の文脈に依存しない他とは切り離され〈本質〉、すなわち、”I”という概念が芽生えやすくなります。また、自ずと〈個〉を尊重する姿勢にもつながります。
 ものごとが特定の場という具体的な文脈における複雑な関係性によって成り立っている東洋的な世界観に立てば、自分もまた特定の場で周囲との関係によって影響を受けたり、変わったりする存在となります。その結果、個の尊重や主体性を重視する姿勢は生まれづらくなります。

 次回は、西洋的な世界観が言語にどう反映されているのかを紹介します。

高杉尚孝(たかすぎ・ひさたか)

筑波大学大学院客員教授・高杉尚孝事務所代表

慶応大学経済学部卒。ペンシルバニア大学ウォートン経営大学院卒 (MBA)。アルバート・エリス研究所認定スーパーバイザー心理セラピスト。ニューヨーク証券取引所認定スーパーバイザー財務アナリ スト。マッキンゼー、JPモルガンのニューヨーク事務所、そして東京事務所に勤務。米系情報コンサルティング会社マネジング・ディレクターを経て、高杉尚孝事務所設立。精神タフネス、論理思考、ライティング、ファイナンス、シナリオ分析などの企業研修に従事。日経ビジネススクール講師、NHK教育テレビ「英語ビジネスワールド」元講師。著書に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」「問題解決のセオリー」「論理表現力』(日本経済新聞社)、「実践・交渉のセオリー」「実践・プレッシャー管理のセオリー」(NHK出版)など。最新刊に「英語ビジネスドキュメント・ライティングの技術」(日本経済新聞社)がある。


■高杉総合研究所ウエブサイト
http://www.takasugisoken.com