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この会社の人材戦略

由紀精密常務 大坪 正人氏に聞く

由紀精密常務 大坪 正人氏に聞く

優秀な人材を集めるには魅力ある情報発信を。
欧州進出をきっかけにブランド価値を高めたい

日本の会社の99%以上は、下請けのイメージが強い中小企業が占める。そんな中で由紀精密はIT技術を駆使してものづくりのおもしろさや技術の高さをアピールする発信を心掛け、優秀な人材獲得に結び付けています。
(編集部 鈴木)

自社のホームページを見直す企業規模からすると優秀な人材が集まっています。創業60年を超える3代目として現在の事業と人材募集について教えてください。

大坪 正人氏

 「現在、社員11人とパートタイマーを入れて従業員20人の中小企業です。電機機器、自動車 医療機器、航空などの部品加工を主にやっています。自社のホームページで人材募集を必要な時に行っています。ありがたいことに、とても優秀で魅力的な社員が、ホームページに興味を持っていただき、入社に至っています。

 一般的に学歴がよければ優秀とは限らないですが、大手メーカーに入ってもおかしくない大学・大学院出身の若手が、当社で油まみれで働いています。なぜ彼らが由紀精密に集まったのでしょうか? 中小企業の給与は安い。それに業績が悪いとボーナスも出ないこともあります。自慢できるようなきれいなオフィスもなく、労働環境は至って普通の町工場です。それでも、モチベーションになっているのは、自分が会社を変えられる、という責任感と達成感、将来の夢だと思います。

 まず社員には責任ある仕事を任せることです。よく、他の町工場の経営者から、どうやってよい人材を集めるか、と質問を受けます。答えは単純で、よい人材から見て、魅力的な会社であることがすべてだと思います。それにはおもしろいことをやっている会社だと、情報発信することです」

営業社員がいない経営スタイルを貫く中小企業の情報発信についてどのように考えていますか?

 「情報発信力は大手とは違い、中小企業はとても弱いと感じます。海外の展示会でも、ほとんど見当たりません。そんな中で当社は積極的に国内に限らず海外にも情報発信してきました。当社には営業社員がいません。創業当時からずっと営業を置かないスタイルを貫いています。それでも、由紀精密はこの5年間で取引先をほぼ3倍に増やしました。リーマン・ショックを無事に乗り越え、売り上げも伸びています。

 それでは何をやったかというと、まず、会社のCI戦略から見直しです。ロゴマークをはじめとして、封筒、段ボール、名刺、ウェブサイトのデザインを一新し、由紀精密ブランドが一目でお客さまからわかるようにしました。その後、無料の展示会から順番に出展、できるだけ社名を出すようにしました。ウェブサイトは、自社のオフィシャルサイト以外にも、『切削加工』で検索すると最初のページに出てくるようにSEO(検索エンジン最適化)対策を施したサテライトサイトを立ち上げました。さらに航空宇宙関連の展示会で、数人の社員が考えたサンプルは大変注目を集めました。2009年の切削加工ドリームコンテストで金賞に入り、高い技術力を示すことができました」

欧州に拠点を置き高付加価値製品を売り込むこれから由紀精密から見て、世界のどこに、またどんな業界に期待しますか?

ロボット用、精密微細部品加工時の様子

 「当社の取引業界は、電機メーカーが9割を占めていましたが、2008年のリーマン・ショック以降、注文がぱったりと止まり、現在は航空・宇宙3、電機3、自動車2、医療1、その他1の割合です。

 世界をはじめ多くの日本企業は、アジア戦略を考えていますが、当社は安価な製品づくりには参加しません。高付加価値製品を欧米に売る戦略を立てていま。高付加価値製品が売りなので、アジアへの展開よりも、最先端の技術開発を行っている先進国のフランスがターゲットなのです。

 フランスを選んだのは、私の大学時代の知り合いにスタンフォード大学で学び、フランス語にも堪能な有能な人材がいたからです」

小さな会社だからできるダイナミックなかじ取り日本の製造業の未来についてどのように考えていますか?

 「日本の会社の99%以上が中小企業です。また、従業員が20人以下の会社が全体の90%を占めます。由紀精密の従業員は20人。とても小さな会社です。私がこの会社の経営を考えるようになってから、ずっと悩んでいる事の一つに会社の規模があります。

 小粒でもキラリと光る会社を目指したいのです。少数精鋭で人数が少なすぎると会社の多様性、応用力に問題が出ます。中小企業では自由にクリエーティブな活動ができる社員を雇用するゆとりもありません。しかしながら、経営に携わってみると、適正規模として、20〜30人程度の会社は、組織としての運営を行うために必要十分です。小回りを利かせて、さまざまな外乱をすり抜けるのにちょうど良いサイズだと感じています。

 中小企業だから、先が見えない中での経営になるかといえば、あまりそうは考えてはいません。逆に、非常にエキサイティングでやりがいはあります。規模の小ささを生かして、ダイナミックにかじを切り、社員一丸で困難も乗り越えられると思っています」 

大坪正人 氏

株式会社由紀精密 代表取締役

大坪正人 氏

大坪正人(おおつぼ まさと) 1975 年に茅ヶ崎に生まれる。東京大学大学院工学系研究科産業機械工学専攻修了後、 2000年インクスに入社し、技術開発に従事。 2005 年自ら立ち上げた世界最高速の金型工場により、ものづくり日本大賞経済産業大臣賞受賞。2006 年、父が経営する由紀精密入社、常務取締役として開発・技術営業業務に従事、現在に至る。"EOY 2012 Japan"にて特別賞に選ばれた。

事業内容 電気電子、電機機器部品、産業用機械部品、一般精密機械部品、医療機器、航空部品等、あらゆる産業の部品加工
従業員数 従業員数 20人 
所在地 〒253-0084 神奈川県茅ヶ崎市円蔵370-34
事業内容 電気電子、電機機器部品、産業用機械部品、一般精密機械部品、医療機器、航空部品等、あらゆる産業の部品加工
設立 1961年7月

(本文中 肩書き、会社データは2013年1月現在)