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自分の生き方を改めて問う、「人生100年時代」

自分の生き方を改めて問う、「人生100年時代」

落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ

近年、落語の人気が急上昇。落語ブームにあやかって、ビジネスでも「つかみはOK」となるようなコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。

転職に初めて踏み切るという方も、転職のチャンスをうかがっている方も、自分という唯一無二の価値ある商品を売り込む有効な術として、ぜひ参考にしてください。

※文/山田敏弘(東海国立大学機構岐阜大学教育学部国語教育講座教授、岐阜大学教育推進・学修支援機構副機構長兼基盤教育センター長)

自分の生き方を改めて問う、「人生100年時代」

 2017年、安倍内閣の下で「人生100年時代構想会議」が発足しました。男女ともに、年齢に関わらず社会で活躍し多様な働き方を実現することが、ますます不可欠となります。高齢になってからの雇用や社会保障など課題はさまざまありますが、一度きりの人生ですから、楽しく生きたいもの。

 今回は、落語を通してこの「人生100年時代」を考えてみたいと思います。

目標をしっかり立てる必要性が増す

 落語家さんには、前座、二つ目、真打ち、そしてご臨終という4つの階級があるという話がよくなされます。テレビ番組「笑点」でも司会者としておなじみだった桂歌丸さんは、まさにこれを地でいった方でした。2018年4月まで高座に上がり、入院後も会長を務めた演芸団体「落語芸術協会」の今後について、熱弁を振るったという歌丸さん。同年7月に永眠されるまで、生涯現役の落語家であったと言って誰も異存はないでしょう。

 享年81歳。人生100年とまではいきませんでしたが、芸の道を全うした一生だったことでしょう。振り返って我が身を考えれば、私自身、55歳。大学教員などというあと10年ほどで消える肩書きよりも、生きた証しとして何が遺せるのか、歌丸さんを思い出すたびに焦燥感に駆られます。今後は定年で区切られてしまう身分としてではなく、真の目標を見つけないといけません。

 やはり、専門の日本語文法の国語教育への応用と岐阜県方言研究を究めるのが第一の目標ですが、このようなニッチな研究は、なかなか日の目を見ません。もう少し社会のためになることを模索中です。

 読者の皆様は「人生100年時代」の働き方、そして生き方を、どのようにとらえ、どのように考えていらっしゃるでしょうか。

落語が持つ興味の幅を広げる奥深さを実感

 そもそも私が落語に興味を持ったのは、大学の授業を、より興味持って聴いてもらえるものにしたいと思ったからです。昨今の大学の授業には授業評価があります。もちろん面白いだけで学生に迎合することはしませんが、たとえ学生のためにならない話をしていたとしても、給料がもらえたのは昔の話。落語から、話の運び方、間の取り方、強調するところと緩めるところの区別などを学んで授業に生かしています。

 しかし、当初の目的とは別に、落語を聴くこと自体が好きになり、人生が少し変わりました。まず、何より気持ちがポジティブになりました。昨年入院した折には毎日、三遊亭兼好さんの落語を聴いて気持ちを保っていました。きっと笑いは医療費抑制にも役立つはず。ちょっとした病気などは、落語を聴いて吹き飛ばしてしまえればいいなと思ったりもしています。

 残念なのは、楽しんで書いてきたこのコーナーが終わること。落語をネタにさまざまな働き方に交えて、日本語のさまざまな特徴も考えてきましたが、自分自身、3年という人生の中でも短くない年月にわたって、コミュニケーションや経済のことと落語を結びつけて考えるきっかけを与えてもらえました。振り返ってみても、これからの人生にとってかけがえのない時間であったとうれしく思っております。

 長い間、読んでくださった皆様と、拙い原稿に真摯にコメントをくださった担当編集者の方に感謝いたします。ありがとうございました。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

東海国立大学機構岐阜大学教育学部国語教育講座教授、岐阜大学教育推進・学修支援機構副機構長兼基盤教育センター長

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。2016年4月から17年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。