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学び直しで年収増? 自分のためになることを楽しく学ぶ時代

学び直しで年収増? 自分のためになることを楽しく学ぶ時代

落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ

近年、落語の人気が急上昇。落語ブームにあやかって、ビジネスでも「つかみはOK」となるようなコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。

転職に初めて踏み切るという方も、転職のチャンスをうかがっている方も、自分という唯一無二の価値ある商品を売り込む有効な術として、ぜひ参考にしてください。

※文/山田敏弘(岐阜大学教育学部教授、専門:日本語学・方言学)

学び直しで年収増?
自分のためになることを楽しく学ぶ時代

 昨今、「学び直し(リカレント教育)」が盛り上がっています。働き方改革で残業が減った分、その時間を生かして学校に通おうとする人も増えているようです。なになに、残業時間が減ったのはいいけれども、その分残業代も減ってしまい、新たに学費を払うのはなかなか厳しいって。確かに短期的には大きな出費となりえますが、学び直しで大学などに通った人の年収は、2年後で約10万円上がったとの分析結果もあります(平成30年度内閣府「年次経済財政報告」)。

 今回は、落語から「学ぶこと」を学んでみましょう。

落語は親父が間抜けで、子供は賢いのが定番

 勉強そのものを落語にしたもので、真っ先に思い浮かぶのは、三代目三遊亭金馬さんの「勉強」という創作落語です。

 学校から帰ってきて、机で一生懸命勉強している子供に向かって、親父が「わからないところがあったら聞きな」と言いますが、だいたい落語の場合、親父は間抜けで子供は賢いというのが定番。鼻にも掛けません。

 それでも父親がちょっかいをだしてくるものだから、子供も「地理、知っていますか?」と聞くと、「寒くなると毎晩チリだ。鯛ちり、鱈ちり、ふぐちりとな」と返します。次に鉄道路線を訪ねると、「天保銭に扁桃腺」と関係ない「せん」ばかりを答えます。

 とかく落語では、学校の勉強は役に立たないものと位置づけます。そのほうが、笑いが鼻持ちならない感じにならないのでしょう。まあ、この「勉強」という落語は、「暗算」を「安産」、「林」を「囃子(はやし)」のように、同音異義語が多く使われていますので、漢字を想い浮かべながら聴くと勉強になります。

落語家から学び直しの種を得るのも有益

 落語を学ぶことが学び直しになることもあります。落語でまくらを話している間に、落語家さんは話し相手のニーズをつかみます。同じようにビジネスパーソンも、商談の相手が何を求めているかをそれとなく探ることが大切です。これも、落語家さんの噺の振り方やモニタリング(観察)方法から学べます。落語を聴くだけでなく、落語家さんたちから学び直しの種を得るのもよいでしょう。

 もうひとつ、最近では環境や経済の話を、小学生に落語で語って考えさせる授業も行われているようです。さらに日本経済新聞では、「落語で知る、日経のある暮らし」というYouTube動画を公開中。若手の立川流真打ち、立川晴の輔(たてかわはれのすけ)さんが、新聞を読む効能を面白く落語仕立てで語ります。一見難しいと思われている現象や事物こそ、落語でわかりやすく語るのは、すでに世の中の常識。企業や業界のPRにはもってこいです。

 現代は、自分のためになることを楽しく学ぶ時代。となれば、落語から学ぶ、落語で学ぶ、どちらもたいへん有益だと考えられます。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。2016年4月から17年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。