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地方活性化のカギ 地方都市で活躍の場を見つけるのも一考

地方活性化のカギ 地方都市で活躍の場を見つけるのも一考

落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ

近年、落語の人気が急上昇。落語ブームにあやかって、ビジネスでも「つかみはOK」となるようなコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。

転職に初めて踏み切るという方も、転職のチャンスをうかがっている方も、自分という唯一無二の価値ある商品を売り込む有効な術として、ぜひ参考にしてください。

※文/山田敏弘(岐阜大学教育学部教授、専門:日本語学・方言学)

地方活性化のカギ
地方都市で活躍の場を見つけるのも一考

 伝統的な盆踊り「郡上踊り」で有名な岐阜県郡上市八幡町に、落語を聞きに行ってきました。「郡上寄席」です。

 1974年、故永六輔さんがぶらりと訪れたことで始まったこの町の落語会は、故桂米朝さん、柳家小三治さんなど、そうそうたる面々がつないでくださり、今も、少し形を変えて続いています。

 人口1万5千人ほどのこの小都市に続く「寄席」から、地方活性化を考えてみたいと思います。

今や情のことばとして珍重される方言

 郡上市を訪れて、まず感じるのは人の優しさです。もちろん、町は人が集まってできていますから、いろんな人がいます。正直、嫌な思いをすることがないとは言えません。しかし、だれかが代わりにやさしい声をかけてくださいます。だれかとつながっていると感じられるのも、この小さな町の魅力のひとつです。

 方言も、その演出に一役買っています。今年の郡上寄席で前座を務めた花乃家金葉さんは当地の出身。あいさつことばの「へっあ(こんにちは)」や「まめなかな(元気ですか)」で、まくらを盛り上げていました。

 やはり、地方都市では共通語より方言がいいですね。旅の情緒を盛り上げてくれますし、地元の人同士の連帯感も強まります。方言は、今や情のことばとして珍重されています。

 私も、いつもは千人も入ろうかというホールで独演会を聴くことの多いのですが、この日ばかりは、百人規模の座敷にしつらえられた高座を最前列で拝見しました。距離の近さは心の近さ。噺家さんも、こちらの顔を見て話してくださるのが、また心地よく、大笑いで大満足の落語会になりました。

あなたの力添えをきっと待っている

 この小さな町の落語会を支えているのは、町の喫茶店のおかみさんほか、有志の皆さんです。郡上市に住まわれている俳優の近藤正臣さんも加わっていらっしゃるようですが、正直、運営は大変なんだろうと感じます。

 高校はありますが、大学はありません。皆が、進学するなら出て行く町ですが、この町で就職したいと戻ってくる人も少なくないようです。新たに移住してこられる人も多く、町の活性化に一役買っています。転職するならば、高い給料など厚待遇を求めてキャリアアップするのもひとつですが、UターンやIターンなど心安らぐ地方都市を選んで暮らしてみるのも一案です。

 郡上寄席では、三遊亭兼好さんが「天災」を語ってくださいました。人から水を掛けられたと思えば腹も立つが、天から雨が降ってきたと思えば平気なものだというこの演目。人生でも見方を違え、発想を換えてみるのはよいことです。都会の、人が多い中で自分を見失いそうになるくらいならば、地方都市で自分の活躍の場を見つけてみるのもよいでしょう。

 全国には、落語会を一所懸命続けている地方都市がたくさんあります。そんな町なら、自分の力を生かせるところもあるかもしれません。日本のどこかで、あなたの力添えを、きっと待っています。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。2016年4月から17年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。