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落語の演目は女性の活躍なしには語れない

落語の演目は女性の活躍なしには語れない

落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ

近年、落語の人気が急上昇。落語ブームにあやかって、ビジネスでも「つかみはOK」となるようなコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。

転職に初めて踏み切るという方も、転職のチャンスをうかがっている方も、自分という唯一無二の価値ある商品を売り込む有効な術として、ぜひ参考にしてください。

※文/山田敏弘(岐阜大学教育学部教授、専門:日本語学・方言学)

落語の演目は女性の活躍なしには語れない

 女子テニスの四大大会で二大会連続となる全米オープン・全豪オープンで優勝した大坂なおみさん。日本のテニス界で史上初となる頂点(世界ランキング1位)を極めました。これまでにも、伊達公子さん、杉山愛さん、沢松奈生子さん、浅越しのぶさん、神尾米さん……と、日本人でテニスと言えば女性の活躍が目立っていました。

 かたや落語の世界では、女流落語家と呼ばれる人は男性の落語家の1割にも満たないほど。しかし落語の噺の中で、女性は大活躍です。

時代の流れとともに描かれる女性の姿も変化

 同じ作品でも、時代によって、また噺家によって、まったく違う噺になるのも落語の面白さです。ぐうたら亭主が拾ってきた大金を、夢での出来事にしてしまい、仕事に精勤するよう仕向けるおかみさんが登場する「芝浜」もそのひとつ。噺家によって、スポットライトを浴びる登場人物が変わるものです。

 以前、このコーナーでも紹介した立川談春さんの「芝浜」は、夫婦愛という観点から語られる、現代的な「芝浜」です。師である談志さんの語りでは、どうしても時代的に、弱く献身的な女房が登場しますが、談春さんのはひと味違います。献身的な側面を見せながらも、夫を叱咤激励する強さは、男女が同等に強みと弱みを持っているからこそ演じられるもの。現代に合った内容と言えるのではないでしょうか。

 ビジネスにおいても、女性が補佐役にとどまっていたのは昔のこと。活躍している女性には、冷静に気配りしつつリーダーシップを発揮するタイプや、女性ならでは視点で戦略を立てるタイプなど、さまざまあると思います。落語によく出てくる女性で言えば、夫を尻に敷くタイプはリーダーシップ発揮型、戦略型は談春さんの「芝浜」の女房のようなタイプに当てはまりそうです。現代の落語は、時代の流れとともに世相を反映して、さまざまなタイプの女性が活躍するようになってきたと言えそうです。

女性ならではの真に自分らしい良さを強みに

 強い芯のある女性の典型を主人公にする落語噺と言えば「猿後家(さるごけ)」が有名です。「猿」に似ていると自他共に認めている「後家さん」は、「さる」という言葉が大嫌い。「百日紅(さるすべり)」はもちろん、敬語の「〜なさる」も機嫌を損ねて叱り飛ばすので周囲が困ってしまいます。口の上手い貸本屋の源さんが、うまくご機嫌を取ろうとするのですが、東京見物で何を見たかと問われ、つい発した「猿回し」でおじゃんになるという、ご機嫌とりの失敗噺です。

 落語では面白く笑えても、このような気分屋がビジネスパートナーだったら、なかなか手ごわい存在です。ご機嫌伺いが目的となり、大事な商売上の交渉事は二の次になってしまいかねないからです。もちろん男女を問わず、活躍と専横とが別物であると弁えることができない人は、確かにいます。しかし冒頭に挙げた女性のアスリートたちは、女性ならではの「しなやかさ」を持ち、真に活躍している人ばかりです。

 最近聞いた女性落語家は、その「しなやかさ」を強みにして、珍しい宗教噺である「宗論(しゅうろん)」を見事に語っていました。ビジネスでも、真に自分らしい良さを強みに、活躍したいものです。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。2016年4月から17年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。