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状況をよく見て、リスクと実力のバランスを客観視

状況をよく見て、リスクと実力のバランスを客観視

落語をヒントにコミュニケーションのコツをつかむ

近年、落語の人気が急上昇。落語ブームにあやかって、ビジネスでも「つかみはOK」となるようなコミュニケーション術を、本コラムではお話ししていきます。

転職に初めて踏み切るという方も、転職のチャンスをうかがっている方も、自分という唯一無二の価値ある商品を売り込む有効な術として、ぜひ参考にしてください。

※文/山田敏弘(岐阜大学教育学部教授、専門:日本語学・方言学)

状況をよく見て、リスクと実力のバランスを客観視

何も生み出さない派閥争いはむなしいだけ

 今年は、角界の大物元親方が相撲協会を辞任するなど、スポーツ界でも一門というものが話題となりました。落語界では、どのような一門があるのでしょうか。

 柳亭左龍(りゅうていさりゅう)さんといえば、古典落語を得意とする中堅落語家ですが、落語で用いられる言葉を解説した「江戸ことば」などの著作物もあります。その中に、一門についての記述がありました。

 「噺家には、柳派、三遊派とかの大きな派があり、その中に、古今亭とか林家とか金原亭とかのグループがある。さらに師匠を中心とした、小三治一門、さん喬一門といったコロニーのようなものがある」(柳亭左龍「江戸ことば」より)

 同じ一門は羽織の紋で見分けることができますし、また何より、一門に属する噺家は師匠の文字を一文字もらうことも多いため、すぐ気づきます。

 左龍さんは、こうも書いています。「私の亭号は柳家から柳亭に変わったが、一門の仲間はずれになったわけではない」(同)。落語界全体の発展を考えれば、「一門」が壁になり争うことよりも、大切なことがあるというわけです。

 ビジネスパーソンも同じことかもしれません。誰かの派閥に入ることは、確かに出世のためには重要なことかもしれません。しかし、会社のため、業界のためにならない派閥争いは、むなしいもの。大きな視野をもちたいものです。

機が熟せば、行動は早いほうがいい

 どうしても我慢ならないと、仲間と袂(たもと)を分かった落語家もいます。それが立川流の家元を名乗った故立川談志さんです。このエッセーを読んでくださる方に、談志一門の落語協会脱退事件を語るのも野暮なことかもしれません。落語界では、ときどきこのような脱退事件があります。

 大きなグループから離れることは、大きなリスクもあることです。ただし、落語界では活躍の場がひとつでないのが幸い。寄席に出られなくなった談志一門の落語家も、それなりの苦労はしたようですが、天才肌の談志ファンが味方となり独演会を催したりして、立川志の輔さんを筆頭に今の隆盛に至っています。土俵はすぐに作れなくとも、寄席以外にも高座は仕立てられますし、なにより落語はひとりで語るものというのも大きいですね。

 ビジネスでの独立を考えている人も、状況をよく見て行動しなければなりません。会社という土俵に守られての業績なのか、自分の高座に客を呼べるような実力があるのか、自分の力を客観視することが大切です。一時期の憤りでの行動なのか、あるいは10年後を見越した行動なのか。リスクと実力のバランスはどうなのか。考えることは、あまたあります。

 しかし、機が熟せば、やはり行動は早いほうがいい。よりよい行動をするためには、まずは情報収集です。日経キャリアNETで賢く情報収集し、機敏に行動することが重要です。

山田敏弘(やまだ・としひろ)

岐阜大学教育学部教授(専門:日本語学・方言学)

1965年岐阜県生まれ。名古屋大学卒。名古屋大学大学院博士課程前期課程修了。大阪大学大学院博士課程前期課程を経て博士取得(文学)。国際交流基金派遣日本語教育専門家としてローマ日本文化会館で勤務経験を持つ。著書は「国語を教える文法の底力」「国語教師が知っておきたい日本語文法」「日本語文法練習帳」(くろしお出版)、「日本語のしくみ」(白水社)、「日本語のベネファクティブ」(明治書院)、「その一言が余計です。」(ちくま新書)、「あの歌詞は、なぜ心に残るのか」(祥伝社新書)など。2016年4月から17年3月まで、ラジオ深夜便(NHKラジオ第一放送、毎月第3木曜深夜)のコーナー「暮らしの中のことば」に出演した。