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おとなのキャリアデザイン講座

第2回 「ただ経験を積むだけでは成長できないのはなぜか」論

第2回 「ただ経験を積むだけでは成長できないのはなぜか」論

 本当にこの仕事が自分に合ってるのだろうか……。なかなかチャンスが回ってこないのに、このままこの会社にいても良いのか……。先が見えないキャリアへの不安を持っている方へ。これまで400社・5万人に対して営業力強化やリーダーシップ開発などの実践的指導を手がけてきた人材開発のプロである鳥居さんが、悩めるビジネスパーソンたちにキャリアデザインのヒントを講義します。

profile

鳥居勝幸(とりい・かつゆき)

サイコム・ブレインズ株式会社、取締役会長

マネジャーのリーダーシップ強化や組織的な営業力強化を主たるテーマに、講師、執筆、コンサルティングを行っている。富士ゼロックス(株)と(株)リクルートに勤務の後ブレインズを設立し起業。2010年よりサイコム・ブレインズ(株)の取締役会長に就任。主な著書として、『そろそろしゃべるのをおやめなさい』(東京ファイナンシャルプランナーズ)、『段取り八分の仕事術』(中経出版)、『ライバルに勝つ営業テク』(日経産業新聞連載)、『部長のためのリーダーシップ』(日経産業新聞連載)など。新刊として『営業大全』(2016年10月発売 日本経営合理化協会出版局)など。


■サイコム・ブレインズのホームページ
https://www.cicombrains.com/


 例えば、「私はこれまで10年もの営業経験があります」という人が、みなやり手の営業かというと、そうとは限りません。それどころか3年目の後輩に追い抜かれてしまっている場合もあります。この差は何なのか?もちろん短期的には運不運ということもあるでしょう。しかし数年スパンで見れば、もはや実力の差であり、それは「学習力」の違いではないかと私は思います。

かなり前の話ですが、私はそれまでに在籍していた会社で覚えた営業のテクニックを、転職した会社でそのまま踏襲して、まったく成果が上がらなかった時期を経験しました。メーカーから人材ビジネスに転向したのですから、普通に考えたら通用するはずがありません。しかし身に付けた技に自信があり、実績を自負していた当時の私は、それを変えることに戸惑いがありました。悩んだあとで気づいたのは、経験そのものが財産なのではなく、経験から学習した応用可能な理論が財産なのだということでした。

「経験学習モデル」という理論があります(デービッド・コルブ)。人は仕事を通じて様々なことを「経験」します。それらの経験を振り返って「内省」し、成功や失敗の要因を考えます。そうすることで、経験したことが「概念化」されます。つまり、今後の仕事に役立つ教訓を得るということです。その次が「実践」です。実践とは、ただ実行することではなく、教訓を意識した、意図のある行動と言えます。これを繰り返して成長するというのが経験学習モデルです。

長く営業経験を積めば、商品説明の話法や対人テクニックが身に付きます。自分が得意とする型もできてくるでしょう。しかしそれは現在の商品において、あるいは現在の顧客層において通用するスキルです。異動しても転職しても通用するポータブルスキルには至っていません。

今は変化の時代です。大切なのは経験から何を学習したのか、そこから応用可能な理論を自分のものにしたかどうか。経験をただ反復させるのではなく、経験を踏み台にして自分を変化させていくこと。私たちビジネスパーソンが成長していく秘訣は、そのあたりにあるのではないかと思います。