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数字を読み解く

パリ協定元年 温暖化防止が投資に 環境関連の雇用拡大はトレンドへ

パリ協定元年 温暖化防止が投資に 環境関連の雇用拡大はトレンドへ

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 オーストラリアや南米アマゾンの大規模な森林火事、2018年、19年に日本を襲った集中豪雨や強い台風など地球温暖化の影響と考えられる被害が広がっています。
 2020年は中国発の新型肺炎で世界が大揺れですが、温暖化は直接・間接的に病原菌の拡大につながる恐れもあります。熱帯性の伝染病が日本にもたらされるというだけではなく、自然災害などによって途上国では公衆衛生のレベルが悪化し、伝染病の蔓延につながることもあるからです。
 日本についても、米損害保険会社AONが2019年の台風19号について経済的な損失を150億ドルと試算しています。千葉県に大きな被害をもたらした15号についても100億ドルと推計しています。世界全体では2320億ドルの損失が発生したとみています。
 2020年は、温暖化ガスの世界的な削減を決めたパリ協定の約束期間が始まった、いわばパリ協定元年です。温暖化防止について企業の社会的責任(CSR)で対応することは許されなくなっています。ESG(環境・社会・統治)投資の最重要な柱として注目されているといえます。
 主要国の金融当局で構成する金融安定理事会(FSB)の下にある気候関連財務情報開示タクスフォース(TCFD)は、温暖化がビジネスの将来や財務にどのような影響を与えるのか、リスク開示を求めています。
 すでにトヨタ自動車やキリンホールディングスといった先進的な企業は、TCFDの指針に基づいて温暖化防止の取り組み(温暖化ガスの大幅削減)をまとめ、中長期的に業績にプラスとなると報告しています。
 日本政府も21世紀後半の早い時期に温暖化ガスの排出ゼロを実現するための具体的な戦略を1月下旬にまとめました。2030年までに技術開発などに官民で30兆円を投資する計画です。欧州連合(EU)は2050年までの排出ゼロを目指し、30年までに120兆円を投じるとの考えを公表しました。
 最先端の情報通信技術をフル活用するデジタル社会への移行(第4次産業革命)は、脱エネルギー(化石燃料)にも直結します。
 社会全体を変革する投資が世界中で計画されています。エネルギー多消費型の製造業やエネルギー産業ではなく、持続可能な社会を実現できる分野で待遇のよい雇用が生まれると予測されます。しかも温暖化防止は長期戦です。地球環境関連の雇用拡大はトレンドになると思います。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)