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数字を読み解く

米中の関係悪化が長期化、景気が急ブレーキの恐れも

米中の関係悪化が長期化、景気が急ブレーキの恐れも

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は日本経済研究センターが11月中旬に公表した短期経済予測の内容を中心に紹介します。
 19年7-9月期の実質GDP(国内総生産)は前期比0.1%増と4四半期連続のプラス成長になりましたが、4-6月期の0.4%増から減速しました。個人消費が前期比0.4%増、設備投資が0.9%増となりましたが、輸出が4-6月期の0.5%増から7-9月期は0.7%減と落ち込みました。輸出減少で経済成長にブレーキがかかっている状況です。
 景気の先行きは、標準的なシナリオとして19年度は0.5%、20年度は0.5%の成長を予測しています。景気は足踏み状況が続くとみているわけです。米中貿易戦争は収束には向かわないが、追加関税合戦などの激化もないことが前提です。
 しかし11月末に公表された(従って短期予測公表時には考慮されていない)10月の経済指標は軒並み悪化しています。実質輸出が前月比1.5%減、鉱工業生産も同4.2%減、小売業の販売額も同7.1%減になりました。消費増税や相次いだ台風による悪天候などの一過性の落ち込み要因もありますが、足元の経済指標はすでに要注意信号を発していると考えられます。
 さらに国際情勢からは目が離せません。11月下旬には米国で「香港人権・民主主義法」がトランプ大統領の署名によって成立したことも、波乱材料です。中国政府の締め付けに反発する香港の民主派を後押しする米国の動きに、中国は「内政干渉」と反発しています。
 米中貿易交渉で部分合意を目指していた両国政府の雰囲気は一変したと言っても差し支えありません。中国は体制への介入とも受け取れる「香港人権法」が存在したままでは、交渉にまったく応じない姿勢に転じてもおかしくありません。
 米国でも中国への投資制限や中国の金融機関の国際決済ネットワークからの閉め出しなどが検討されています。金融戦争へ戦線が拡大する恐れがあります。12日には英国のEU離脱の帰趨を決める英総選挙もあります。
 雇用情勢は完全雇用の状況が続いていますが、世界情勢の行方次第で急減速するリスクが高まっているといえるでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)