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数字を読み解く

英国が決める自国第一主義の帰趨

英国が決める自国第一主義の帰趨

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 英国ではついに12月12日に総選挙が行われることになりました。EU(欧州連合)からの離脱を掲げるジョンソン首相率いる保守党が過半数を占めるのか、再び混乱するのか、年内に決まる見通しです。
 最悪の選択である合意なき離脱を避けられるのか? 極めて不透明です。12月の総選挙の結果は、世界に広がる自国第一主義の帰趨を決めると言ってもいいのではないでしょうか。
 自国第一主義の背景にはデジタル化とグローバル化によって、安定的な生活環境を労働者へ提供してきた製造業の雇用が縮小していることがあります。
 グローバル化もデジタル化も、経済成長を高め、生活を豊かにする側面はあるのですが、賃金の安い途上国で生産したほうがコストを抑えられ、安価で質の良い製品ができ、それを輸入したほうが消費者に歓迎されるでしょう。
 工場で人工知能(AI)やIoT(モノのインターネット)をフル活用すれば、より少ない労働者で質の高い製品を生産することも可能になります。
 製造業に代わり雇用機会が増えているのは、非製造業です。デジタル化を支える職業には、金融やIT(情報技術)といった高度な知識や技能が必要で、高い報酬が期待できる職業もありますが、そうした職に就けるのは、まだまだ少数です。
 日本は皮肉なことにデジタル化へ対応が遅れているため、格差拡大が顕著ではなく、英国や米国ほど自国第一主義の世論は盛り上がっていません。足元は失業率(9月は2.4%)も有効求人倍率(同1.57倍)も、完全雇用状態です。
 グローバル化やデジタル化の推進は、少子高齢化が加速する日本を支えるための経済成長の実現に不可欠です。政府が検討を進める全世代型社会保障は、格差拡大を最小限に抑えつつ、日本がグローバル化やデジタル化のメリットを最大限に享受することが隠れた主要な課題かもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)