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数字を読み解く

トランプ発言、貿易戦争で景気は下降線か

トランプ発言、貿易戦争で景気は下降線か

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

  2018年度の経済指標と2019年1-3月期の経済指標を比べると景気ははっきりと陰りを示しているようです。18年度の鉱工業生産指数は前年度比0.2%増となりましたが、19年1-3月期は前期比2.6%減になっています。18年度の商業動態統計の小売業販売額は前年度比1.6%増ですが、1-3月期は前期比1.3%減になっています。生産も消費も18年度第4四半期(19年第1四半期)は低下傾向です。

 陰りの最大の要因は、米中の貿易戦争と言ってもよい状況を受け、中国経済が冷え込んだことで、輸出が低迷していることです。19年1-3月期には前年同期比3.9%減にまで落ち込みました。18年度上半期は同5.2%増だったことを考えると、急速に輸出が減ったことがわかります。特に3月の中国向け輸出は前年同月比9.4%減、数量ベースでは同15.2%も減少しています。

 米中は本格的な貿易戦争に発展することを避けるために、閣僚級での交渉を重ねていましたが、トランプ大統領が突然、「10日から25%への追加関税を中国製品に課す」との方針を打ち出したため、首脳会談はおろか、閣僚交渉も継続できるかどうかも危ぶまれます。予測しづらいトランプ大統領の行動を考慮すると、将来、習-トランプ会談が実現しても、合意に至るか、不透明です。

 トランプ氏にとって、もはや経済問題が第一ではなく、再選が第一目標でしょうから。万が一、米中交渉が上手くまとまらず、欧州や中国による報復措置を招いて、戦前のような貿易戦争からブロック経済化するリスクもゼロとは言い切れないと考えています。また米中交渉の行方は、日本が米国と交渉する物品協定(実質的には日米FTA)の内容にも影響します。

 高齢化、人口減少の日本では完全雇用の状態は、もうしばらく続くかもしれません。しかし構造的に人手不足となっている介護など労働集約的な産業以外は、徐々に雇用の逼迫状況は緩和される可能性が高いといえるでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)