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数字を読み解く

高度な技術を生かしきれない日本人――GAFAも嘆く保守性

高度な技術を生かしきれない日本人――GAFAも嘆く保守性

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

  2019年3月20日に公表した日本経済研究センターの産業予測を紹介します。

 当センターの「第45回中期経済予測」では、日本経済は2030年度までに少子高齢化などを背景にGDP成長率を低下させ、0%台半ばに落ちるとみています。この中期予測をベースに三大都市圏、地方圏の8地域に分けて2030年までの産業別予測をすると、都市も地方も厳しい現実が浮かび上がります。

 3大都市圏はAIやIoT、ビッグデータをフル活用する、第4次産業革命時代におけるイノベーション創出機能を果たせそうもありません。東京を含む関東圏ですら、2021-30年の年平均成長率は0.5%(実質産出額ベース≒生産であり、GDP≒粗利ベースではない)です。

 近畿圏は訪日外国人増に支えられていますが、同0.4%です。自動車産業を抱える中部圏は、自動車の海外生産が加速することが想定され、同0.1%に落ち込みます。成長率が高まらないのは、日本に根強く残る年功序列・終身雇用といった雇用慣行が障壁となり、高度人材の獲得競争で国際的に遅れをとっているからです。

 米IT大手「GAFA」の1社にヒアリングした結果は興味深いものでした。東北地方で日本企業の技術者100人程度に、現状の2~3倍と想定される給与水準を提示したところ、「誰も転職に応じなかった」とGAFAですら日本人の保守性に嘆いています。自ら持つ高度な技術を生かそうとしていない日本人の姿があります。

 技術も人材も賞味期限は加速的に短くなっています。日本のエレクトロニクス産業の没落を考えると、技術者も「評価されるうちに十分な報酬を得る」という生産性を重視した考え方に頭を切り換えないと、いつまでも会社があるという時代ではありません。経営者だけでなく、働く側も意識を変える必要があります。

 地方はより深刻です。東北や四国は21-30年の年平均成長率はマイナスです。人口減による内需減少に伴い、製造現場が海外や他地域へ移転、サービス業も衰退が加速すると予測しています。九州圏だけが関東、近畿と遜色ない年平均成長率0.4%になると予測しています。観光を中心とするインバウンド(訪日外国人)消費を取り込み、競争力のある製品の製造拠点となっているからです。

 地方圏は少なくとも、早急にインバウンドの取り込みについて力を注ぐことが必要でしょう。山形県の有名な温泉を旅行したときも、外国人の姿はほとんど見かけませんでした。「日本人だけ、馴染みの客だけ」を相手にするという保守性を打破しないと、東北や四国は雇用維持どころか、生き残りすら厳しいでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)