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数字を読み解く

転職を考える際の重要な指標に落とし穴

転職を考える際の重要な指標に落とし穴

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

  このコラムを書くうえで、極めて重要な統計である毎月勤労統計が不適切な手法で調査、データが修正されていた問題が世間の注目を集めています。

 2018年1-11月の名目賃金の伸びは0.4ポイント下方修正になります。実質賃金の伸びはマイナスになる可能性が高いでしょう。また毎勤統計以外にも、経済状況を的確に把握するために重要な「基幹統計」のうち、約半数で何らかの問題が発生していたことが明らかになっています。

 さらにあまり注目されておらず、再集計結果も公表されていませんが、産業別や地域別にみた場合の修正度合いはどのようになっているのか?実はまったくわかりません。

 賃金は各産業の雇用状況や企業の経営方針を反映する重要な統計で、就職や転職を考える際に基本的に確認していただきたい重要な指標ですが、信用できない状態というわけです。

 政府の統計作成には、調査方法が不適切という問題以上に、根深い問題がある可能性が高いのです。政府統計全体を見直し、改善策を検討する統計委員会の仕事に携わったことのある元政府高官に聞いたところ、「予算獲得に役立つ統計作成には熱心だが、予算を使った結果の政策効果を評価する統計作成には抵抗が強かった」と打ち明けられました。

 個々の統計調査が正確に実施されているかどうか以前に、統計として集めるデータの取捨選択自体に各省の思惑があります。調査方法が不適切という前に、調査方法が正しくても、そもそもの作成意図にバイアスがある恐れがあるわけです。

 グローバルにみると、エクセレント・カンパニーはICT(情報通信技術)を駆使して購買データや機械の稼働データを入手、AI(人工知能)を使って分析している時代です。政府しか経済全体を把握できない時代ではなくなっています。GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)は政府以上に世界の状況を的確に把握しているかもしれません。

 政府も人海戦術によらないデータ収集が必要です。政府のマクロの経済指標をみる際には、注意が必要なことを今回の騒動は教えてくれているようです。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)