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数字を読み解く

19年度も完全雇用状態、しかし賃金は上がらず

19年度も完全雇用状態、しかし賃金は上がらず

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は日本経済研究センターが11月14日に公表した短期経済予測の内容を中心に紹介します。

 17年7-9月期の実質GDP(国内総生産)は、西日本豪雨や台風21号、北海道で発生した胆振東部地震といった自然災害によって生産活動や消費に大きな影響が出たことで、前期比0.3%減(11月14日公表の1次QE)のマイナス成長になりました。

 消費や投資といった内需だけでなく、輸出にも影響が出て外需も減少しました。関西国際空港が台風21号で水没し、大阪や京都で訪日外国人が激減したというニュースが流れていたことを覚えている方もいると思いますが、自然の猛威は直接被害だけでなく、侮れないことがわかった7-9月期です。

 ただ復旧が始まれば、日本の景気は緩やかに拡大すると予測しています。18年度の成長率は1.1%とみており、景気回復期間が19年1月には戦後最長となりますが、それは達成すると考えています。

 19年度は、消費税率の10%への引き上げが10月に予定されていることや、東京五輪関連の需要がピークアウトすることなどで、0.7%成長にスローダウンするでしょう。スローダウンといっても日本の成長力(潜在成長率)は1%弱と大半のエコノミストは推計しており、雇用環境が急速に悪化することはないと思います。

 19年度の失業率は2.5%と完全雇用状態が続くとしています。ただ賃金は0.9%しか上昇しないと予測しており、消費者物価上昇率を1%(消費税引き上げの影響を除く)程度とみており、実質賃金はまったく上昇しないと理解していいでしょう。

 景気へのリスクは、米国の通商政策です。鉄鋼・アルミニウムへの関税引き上げは、米中間で貿易戦争になっています。さらに2000億ドル分の中国製品へ関税率を10%から25%に引き上げることは、1日の米中首脳会談で90日間の猶予ができましたが、予断を許しません。

 カナダ、メキシコと結ぶ新NAFTAは、自動車の輸出数量制限などが盛り込まれており、日本が米国と交渉する物品貿易協定(TAG)でも焦点になると思われます。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)