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数字を読み解く

人手不足でも、省力化進まない中小・非製造業

人手不足でも、省力化進まない中小・非製造業

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 10月1、2日に日本銀行が公表した全国企業短期経済観測調査(短観)によると、企業規模にかかわらず、今後も人手不足が続き、深刻化すると企業が予測していることが明らかになっています。

 雇用人員判断DI(「過剰」と答えた企業の割合-「不足」と答えた企業の割合、%ポイント)は全産業でみると6月調査(▲32、▲はマイナス)から▲33と不足感が増しています。大企業でも▲21から▲23、中小企業は▲35から▲37となっています。先行きの見通しについても大企業は▲23のままですが、中小は▲42と悪化すると予測しています。

 特に非製造業の中小企業は、足元で▲40と深刻な人手不足が続いていると答えていますが、先行きについては▲46との回答になっています。中小・非製造業にとっては人員の確保が事業の死活問題になりつつあるようです。

 中長期の人手不足解消には省力化・自動化を進める設備投資が不可欠ですが、こちらは企業規模、製造・非製造業で大きく異なっています。

 2018年度の設備投資計画は、大企業全体では前年度比13.4%増を計画しています。輸出が好調な製造業は17.5%増ですが、非製造業も11.0%増になっています。大手の小売業や飲食・宿泊業は、訪日外国人客への対応もあり、20%前後の増加を計画しています。

 一方、中小企業は製造・非製造業で明暗が分かれています。製造業は好調な大企業に支えられ、設備投資も11.6%増を計画していますが、非製造業は18.1%減との結果になっています。規模が小さいために、設備投資する余力なく、その結果、インバウンド需要などを取り込めない状況のようです。経常利益も中小・非製造業は18年度も減少すると予測しています。

 世界では米中間の貿易戦争の行方は予断を許さない状況です。英国のEU離脱問題もソフトランディングが難しくなりつつあります。貿易戦争の影が濃くなってくると、輸出産業は直撃を受け、雇用も設備投資も環境が悪化しますが、その前に人材不足で設備投資余力のない中小・非製造業から厳しい経営状況に陥るかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)