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数字を読み解く

貿易戦争に原油高、景気は減速の可能性

貿易戦争に原油高、景気は減速の可能性

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 前回のコラムで言及しましたが、米国、中国はいよいよ貿易戦争に突入する構えです。また欧州連合(EU)やカナダ、メキシコといった諸国とも鉄鋼、アルミへの米国の関税引き上げで、報復関税合戦になっています。

 さらに米国は輸入車の関税を25%に引き上げる姿勢を示しています。メキシコでは米トランプ政権の貿易・移民政策を強く批判する新興左派政権が誕生しました。カナダのトルドー政権は米国を強く非難することで支持率を回復させています。すでに貿易戦争状態なのかも知れません。

 貿易戦争の影響は単純ではなく、EUが二輪車へ報復関税を課したことで、ハーレー・ダビットソンが米国以外の第三国での生産強化を検討し始めています。トランプ政権は米国内の製造業を守るために関税引き上げに踏み切りましたが、グローバルな生産・販売体制を確立している製造業への影響は複雑です。トランプ政権の狙いが簡単に実現するとは限りません。すると、さらに強硬な貿易政策が打ち出され、それに対する報復という悪循環に陥る恐れが強くなっています。

 7月2日に日本銀行が公表した全国企業短期経済観測調査(短観)では、鉄鋼や非鉄金属、自動車の大企業の業況判断(景気が良いと答えた企業の割合-悪いと答えた企業の割合)が前回調査時点(3月)よりも悪化しています。先行きについても非鉄、自動車は悪化するとみています。企業も貿易戦争の行方を懸念し始めている可能性が高いといえるでしょう。

 さらに原油高を反映して製造業大企業の仕入価格判断(上昇-下落)が3月時点よりも30%ポイントとなっています。一方、販売価格判断は5%ポイントです。コスト上昇ほどに販売価格は引き上げられない状態です。原油価格が上がっても5、6月の消費者物価上昇率が1%にも満たない状況とも整合的です。収益圧迫要因とみているようです。

 5月の有効求人倍率1.60も、失業率2.2%も完全雇用を示しています。しかし景気は減速基調に入り、人手不足感は足元の今夏がピークかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)