ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

数字を読み解く

貿易戦争、新興国からの資金流出などリスク拡大

貿易戦争、新興国からの資金流出などリスク拡大

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は日本経済研究センターが5月17日に公表した短期経済予測をご紹介します。

 17年1-3月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.2%減(年率0.6%減)と9期ぶりのマイナス成長になりました。実績を受けて18年度の成長率予測を1.0%と3月予測よりも0.3ポイント引き下げました。17年度は1.5%成長を達成しており、これは日本の成長力(潜在成長率:1%前後とされる)を確実に上回っています。

 しかし足元は陰っている可能性も否定できません。短期予測のメインのシナリオでは穏やかに景気拡大が継続するとみていますが、リスクも強く指摘しています。

 景気のけん引役は米国、中国を中心とする世界経済ですが、両国は貿易戦争の様相を呈しています。米国による安全保障を理由とした鉄鋼・アルミ製品への追加関税と、知的財産侵害を理由とした中国製品への制裁関税という貿易摩擦が生じています。

 米国は20年までに対中貿易赤字を約2000億ドル削減することを要求しています。両国が合意に達せず、米国が既に表明している1500億ドル相当の広範な品目に追加関税を課せば、中国が報復措置に転じることで、両国は本格的な貿易戦争に突入するでしょう。

 高機能の電子部品や素材を日本は中国へ大量に輸出しており、大きな影響は避けられませんが、日本だけでなく、世界経済へ全体に悪影響が及ぶでしょう。

 トランプ政権は欧州連合(EU)やカナダ、メキシコといった同盟国からの鉄鋼やアルミニウム輸入への追加関税を発動、EUなども報復措置に乗り出すことを表明し、自由貿易体制を構築してきた先進国同士も貿易戦争になる危険を帯び始めています。

 また米国の金利上昇を受けて新興国から資金が流出する動きもあります。新興国から大量の資金流出が起これば、単なる景気後退ではすまない恐れもあります。

 足元の雇用情勢は堅調ですが、リスクが増大していることは確実なようです。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)