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数字を読み解く

景気は今がピークかも……

景気は今がピークかも……

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 2017年度の経済指標は軒並み絶好調の数値を示しました。有効求人倍率は1.54倍となり高度成長期にも劣りません。正社員の有効求人倍率もデータを取り始めて以来、年間平均で1を越えました。失業率も2.7%で16年度に比べて0.3ポイント改善、鉱工業生産指数も4.1%上昇しました。消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)も0.7%上がり、デフレマインドから脱却しつつあります。

 しかし景気は今がピークかもしれません。米国の18年1-3月期の経済成長率は前期比年率2.3%と17年10-12月期の同2.9%から減速しています。中国の経済成長率は横ばいに推移していますが、内需ではなく輸出に支えられています。日本も輸出(17年度の輸出金額は前年比10.8%増の79兆2226億円)に支えられた成長が続いています。

 輸出主導の回復が続くなか、米トランプ政権による安全保障上の問題を名目にした対中貿易制裁問題が浮上し、先行きは不透明な状況です。鉄鋼製品などで制裁関税を課したり、中国の大手通信機器メーカーの機器を米国内の通信事業者に使わないように求めたりする制裁を加えようとしています。対中貿易赤字を2020年までに2千億ドル(22兆円)削減しようという要求を突きつけています。

 中国は米国から航空機や半導体、天然ガスなどの輸入増を準備していると報道されていますが、2千億ドルという削減には遠く及ばないと予測できます。本気で貿易赤字を大幅削減しようとすれば、管理貿易的な対策が必要になることは確実です。

 中国の米国への輸出が大きく減少すれば、中国経済の減速は避けられません。日本の輸出増の原動力は中国・アジア向けです。特に17年度の対中輸出は前年度比18.3%増の15兆1873億円と過去最大になっていますが、中国経済の減速は日本の輸出減に直結します。アジア諸国と中国経済の結びつきを考えると、アジア経済も減速必至です。中国向けだけでなくアジア向け輸出の減少も避けられません。

 人口減少、高齢化が進行する今の日本は、個人消費を中心とする内需に期待してもない物ねだりです。景気はピークに達しても実質賃金は上がらないまま、景気後退に入る可能性が高まっています。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)