ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

数字を読み解く

第4次産業革命への改革、勝ち組・負け組を明確化

第4次産業革命への改革、勝ち組・負け組を明確化

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は2018年3月下旬に公表した日本経済研究センターの産業調査を紹介します。18年1月の当コラムでは、日本が中期的に標準的な成長(穏やかに経済成長率が低下し、2030年には0%半ばまで低下する)に基づいた産業分析を紹介しましたが、今回は第4次産業革命の波に乗るべく、経済改革に取り組んだ場合の分析を紹介します。

 代表的な違いは自動車産業です。主要幹線道路での自動運転が実現することによって、自動車産業は自動車販売からサービス提供主体に変わると考えられます。シェアリングエコノミーの広がりによって「所有」から「使用」へ自動車の利用方法が変わるため、生産台数は標準シナリオでは2030年に年間で800万台を割り込むと予測しましたが、標準シナリオをさらに8%下回るとみています。

 しかし新たに30兆円近い自動車・運輸サービスの関連市場が産まれるとみています。大型トラックもほとんど無人化し、現在問題となっている運転手不足はほとんど解消するでしょう。

 こうした自動車産業のIT(情報技術)化ともいえる動きを支える情報通信業も標準予測では、海外の大手IT企業に押されて生産性が低下するとみていましたが、生産性が改善するでしょう。自動車産業以外にも機械産業もIoT(モノのインターネット)などをフル活用し、生産性向上・競争力強化に力を注ぐので、情報通信業には追い風になるでしょう。

 改革が進むとビジネス環境が厳しくなる産業もあります。例えば鉄鋼業は、自動車の生産台数が低下することで、需要が減少します。粗鋼生産量は1億トンを割り込み、9000万トン/年まで落ち込むでしょう。電気自動車など次世代自動車が必要とする軽量素材との競合にもさらされるでしょう。

 鉄の特長は安くて丈夫という点ですが、それだけに大量に利用されないと収益維持が難しくなります。生産性の低下が標準シナリオよりも大きくなるでしょう。また日本のエレクトロニクス産業は、すでに競争力を失っており、改革が進もうが進むまいが、2030年までに消滅の危機を迎えるでしょう。

 このように改革を進めると勝ち組・負け組がはっきりしていきます。足元では人手不足が続いていますが、第4次産業革命の進行は、産業構造とともに中長期的に雇用状況を大きく変えていくはずです。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)