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数字を読み解く

景気は底堅いが、賃上げは期待先行

景気は底堅いが、賃上げは期待先行

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は日本経済研究センターが3月8日に公表した短期経済予測をご紹介します。17年10-12月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.4%増と8期連続の成長が続きました。18年度は1.3%成長、19年度は10月に消費税率の引き上げが予定されており、成長率は減速し、0.9%と予測しています。基本的に景気拡大が継続するとみています。

 景気のけん引役は米中を中心とする世界経済です。米国は17年末に決まった大規模減税の景気押し上げ効果がありますが、今の同国は完全雇用状態です。物価上昇で相殺され、効果は限定的でしょう。それでも18年は2.6%、19年は2.3%と同国の潜在成長率をやや上回る水準で成長を続くと予測しています。中国も好調な欧米の世界経済を受けて輸出の増加が続き、6%を上回る高成長が続くと見込んでいます。18年は6.4%、19年は6.2%です。

 経済全体は成長が続き、労働需給は完全雇用状態が続いていることを受けて、パートやアルバイトなど非正規労働者の賃金上昇率は、さらに高まる見通しです。安倍晋三首相は「賃上げ率3%」を期待すると発言をしており、賃上げに対する社会・政治的要請が強まっています。企業の高収益や物価上昇率の高まりを受けて、18年春闘の賃上げ率は、中小企業も含め、昨年よりも高まるでしょう。

 しかし実態は、ボーナスなど一時金支給によるものが大層を占めると考えられます。消費の底上げと深く関連するベアの引き上げ幅は限定的と思われます。経営側は、依然として残る経済の先行き不透明感や期待成長率の伸び悩みを不安視しています。第4次産業革命が情報通信業だけでなく、あらゆる産業の構造を揺さぶっており、固定費増加要因となるベア引き上げには慎重な姿勢を崩していません。

 同産業革命は雇用制度、働き方にも大きな影響があります。働き方改革で裁量労働制は先送りになりましたが、能力差によって報酬が増える人、減る人という濃淡もはっきりするでしょう。全体で3%の賃上げは難しいかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)