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数字を読み解く

経済構造は一変しても、成長は限界?

経済構造は一変しても、成長は限界?

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は17年12月に公表した日本経済研究センターの産業調査を紹介します。

 第4次産業革命と称される高度な情報技術(IT)の進化・深化によって経済構造は一変しようとしています。しかし労働生産性に大きな改善はみられません。足元の景気は有効求人倍率(17年11月は1.56倍)や失業率(同2.7%)と完全雇用を超えて過熱気味といえる状況になっていますが、それでも17年度の民間エコノミストの経済予測は平均で2%弱の成長となっています。

 これ以上は成長力(潜在成長率)の制約で成長の限界という状況でしょう。産業調査では、主要産業について2030年度まで労働生産性の伸びを予測しています。足元の好景気を反映しても30年度までには人口減少・高齢化の進行の影響で経済全体の成長は低下し、生産性の伸びは急激に鈍化する見通しです。生産性の伸びの低下は成長力の制約に直結します。

 例えば、世界的に競争力がある機械産業でも、2000-15年の間に生産性を40%以上高めましたが、15-2030年では30%の上昇にとどまるでしょう。自動車産業も過去15年間で6%近く生産性を高めましたが、次の15年間では伸びは半減するでしょう。一次金属(主に鉄鋼)は今後15年間で生産性の伸びはほぼゼロまで低下するとみています。ソフト産業である情報通信業に至っては、伸びではなく生産性が低下すると予測しています。 なぜこんなに悲観的な予測になるのか、不思議に思われるかもしれませんが、日本企業が過去にしていた努力が限界に近づきつつあるからです。

 例えば生産拠点の海外移転が進む自動車は、国内生産台数が伸びない分を高級車へシフトすることで成長してきました。鉄鋼も粗鋼生産量の緩やかな減少を高品質鋼に力を注ぎ、産業を発展させました。しかし今後は急速に人口減少・高齢化が進むので、生産量の低下がさらに大きくなり、品質向上だけではだんだんと補えなくなるわけです。情報通信業はクラウドへのシステム移行が進み、顧客ごとに個別に開発するシステム受注が、将来ほとんどなくなる可能性もあるでしょう。

 生産性の伸びが高まるのは、今後も増え続ける可能性が高い訪日外国人の恩恵を受ける業種(観光関連や小売り)のみとなっています。中長期的には内需への依存度が高い産業ほど成長の限界に直面し、雇用・賃金環境は、より厳しいものになるでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)