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数字を読み解く

景気は底堅いが、賃上げは期待先行

景気は底堅いが、賃上げは期待先行

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は11月下旬に日本経済研究センターが公表した第172回短期経済予測に基づいて当面の景気情勢を考えましょう。

 17年7-9月期の実質GDP(国内総生産)は、前期比0.3%増と7期連続の成長が続きました。12年12月以降続いている景気回復は、戦後最長になったとみられています。18年度も1%を超える経済成長になる見通しです。企業収益は18年度も増加し、史上最高益を更新する見通しです。設備投資は3%近く増加すると予測しています。海外経済も欧米や中国の景気が底堅く推移するために、輸出も3%以上増えるでしょう。

 雇用環境は働き手によって一段と好転するとみています。10月の有効求人倍率は1.55倍と43年ぶりの高水準で、正社員の有効求人倍率も1.03倍と1を超えており、人手不足感はますます高まっています。一方で失業率は2.8%のまま前月比横ばいなので、雇用のミスマッチを除くと、働きたい人はすべて職についている「完全雇用」状態になっています。当センターの予測も賃金もそろそろ上昇に転じると考えています。

 18年度はこれまでの0%台から1%以上の賃金上昇となるとみています。足元では人手不足を反映してパート労働者を中心に賃金が上昇しています。安倍晋三首相は3%の賃上げを産業界に要請、実現した企業への法人税減税も検討されていると報じられています。こうした動きを背景に「そろそろ賃上げが本格化するのでは」との期待もあります。

 もちろん経営者側は生産性改善を伴った潜在成長率(成長力)の向上なしには、賃上げの継続は難しいとの立場です。当センター予測の1%と政府が目指す3%賃上げの差をどこまで縮められるかは、生産性向上次第というわけです。

 人口減少や高齢化が加速する日本は、生産性を上げる以外に成長力を保つ方法はありません。成長力を向上させない限り持続可能な賃上げは実現できません。第4次産業革命といわれるIT(情報技術)の進化・深化に対応する国内投資を高めるなど正攻法で望むしかありません。個人も第4次産業革命に対応できる能力を身に付けることが一層、迫られるでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)