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数字を読み解く

アベノミクス――成果は訪日外国人増、課題は生産性維持

アベノミクス――成果は訪日外国人増、課題は生産性維持

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 10月の総選挙は与党が圧勝し、安倍晋三首相は11月1日の記者会見で「これからも経済最優先でアベノミクスの3本の矢を放ち続ける。改革あるのみ」と述べました。

 今回は10月末に日本経済研究センターが公表した第44回中期経済予測を紹介しつつ、アベノミクスのこれまでの成果と中長期的な日本経済の見通しについて考えてみたいと思います。

 最大の成果は、異次元の金融緩和による円高是正によって輸出競争力が回復したうえ、新たに訪日外国人の激増という新たな需要創出に成功したことでしょう。

 2013年7-9月期の訪日外国人の旅行消費額は3253億円でしたが、17年7-9月期には1兆2305億円と4倍近くに膨らみました。年間で4兆円近くに達し、国内総生産を1%弱押し上げています。宿泊・飲食サービス業の就業者も13年度から17年度にかけて2.5%増え、400万人近くに達しています。

 豊かな中国の誕生という対外要因はありますが、免税店を百貨店や家電量販店だけでなく、コンビニエンスストアにも幅広く認めた規制緩和の成果でもあるでしょう。

 今後の見通しはどうでしょうか? 中期予測によると日本の潜在成長率(成長力)は足元では1%以上ですが、2030年にかけて半減すると予測しています。設備投資の伸びと人口減少は相殺し、成長力はほぼ全要素生産性(技術進歩や創意工夫)によるものだけになるとみています。

 同予測は全要素生産性の伸び(0.6%)が継続するとしていますが、やや楽観的かもしれません。高齢化の影響で労働者の平均年齢は上がり続けます。30年までに50歳以上になる可能性もあります。

 働く人の高齢化が急速に進んでも技術進歩や創意工夫のレベルを維持できるのでしょうか? 生産性が維持できなければ、国際競争を生き抜き、雇用拡大・賃金上昇を実現する必要条件を満たせません。

 安倍首相は生産性革命の柱として「人づくり革命」を掲げています。中高年労働者のICT(情報通信技術)への対応するためのリカレント教育(学び直し)などは、大きなチャレンジになるでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)