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数字を読み解く

「人づくり革命」と「働き方改革」で生産性向上を

「人づくり革命」と「働き方改革」で生産性向上を

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 北朝鮮情勢の緊迫化、突然の解散・総選挙、小池劇場の開幕で、すっかり忘れられた感のある「人づくり革命」と「働き方改革」。しかし、どちらも安倍首相の肝いりの政策で、中長期的には日本の将来を左右する政策です。

 人づくり革命は幼児教育の無償化や、高等教育の授業料免除などに消費増税の一部を充てるとの政策が柱ですが、本当に生産性の向上につながるのか、不透明です。大学への進学率を今以上に高めても、第4次産業革命を主導できる人材が増えるのか、よくわかりません。創造力が豊かでイノベーションを起こせる人材を飛躍的に増やすことが求められていますが、そのような教育は、国内のどこの機関が担えるのでしょうか。

 中高年のリカレント教育も同様ですが、必要な技能をどのような体制で教育するのか、質の問題が、まったく検討されていません。バラマキ政策に陥るという懸念も出ています。

 働き方改革も、長時間労働の是正のみに焦点が当たっていますが、本来は生産性向上の実現が最終的な目標です。働き方を多様にすることは、多くの人が働く機会を得られることになりますが、それには労働の評価方法も変える必要があります。職務を定量的に定義し、成果目標を設定しないと、改革は機能しません。

 日本的雇用を維持したまま、労働時間を少なくすると、アウトプットも減少するだけでしょう。結果として給与総額も少なくなる可能性が高く、しばらく経つと、元の長時間労働に戻ってしまう恐れも強いでしょう。

 成果目標を具体的に決めることは「成果主義」として、労働者は「賃下げや解雇の可能性が大きくなる」とおびえています。企業側も本音では「優秀な社員の人件費が高騰する」と否定的です。

 今年に入ってから有効求人倍率も失業率も完全雇用状態を示しています。2日に発表された日銀短観の雇用判断DIでも、人手不足感が今後強まると予測しています。しかし生産性の向上なしに実質賃金は上昇しません。「人づくり革命」も「働き方改革」も、生産性向上のために進められることが必要ではないでしょうか。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)