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数字を読み解く

利益を何に使うのか、聞いてみたい

利益を何に使うのか、聞いてみたい

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 9月は四半期ごとに改訂する日本経済研究センターの短期経済予測を紹介したいと思います。2017年4-6月期の実質GDPは前期比0.6%増で、6期連続のプラス成長になりました。当センターの予測も、6月に当コラムでご紹介したときよりも17年度、18年度とも経済成長率を上方修正しています(17年度は+0.1ポイントの1.5%、18年度が+0.1ポイントの1.0%)。

 景気について楽観的な見通しは、当センター以外のシンクタンクも公表しています。しかも7月の有効求人倍率は1.52倍、失業率は2.8%と人材逼迫感は加速している状況です。しかし景気や雇用環境が好転しても、所得環境は大きな改善の兆しは見えていません。

 当センターの予測では雇用環境について現状と同じように人材不足の状況が続くとみていますが、名目賃金の上昇率を17年度0.6%、18年度は0.8%と見込んでいます。一方、消費者物価(生鮮食品を除く総合)上昇率は0.8%、0.9%と予測しています。賃金よりも物価の上がり方が大きく、これでは実質賃金(名目賃金の上昇率-消費者物価上昇率)はマイナスになります。

 短期予測では所得環境が改善しない背景に、正規雇用者の賃上げが抑制されていることを挙げています。アルバイトやパートの賃金は上昇基調にありますが、17年の春闘の結果は昨年度を下回る水準にとどまりました。また足元では特別給与も伸び悩んでいます。そのため先行きも改善を見込んでいません。

 最新の法人企業統計では、17年4-6月期の経常利益(除く金融・保険業)は前年比22.6%増(22兆3900億円)で、今年度も最高益を更新するでしょう。保有する現預金も前年比4.8%増で190兆円を超えています。一方、設備投資は1.5%増(9兆4500億円)で、このレベルではキャッシュフロー以下です。競争力強化、生産性向上に結びつくにくい水準です。

 投資もせず、賃金にも回さず、利益を何に使うのでしょうか。経営者の方々に聞いてみたいと思う筆者です。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)