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数字を読み解く

正社員時代の到来か?

正社員時代の到来か?

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 6月の有効求人倍率は1.51倍とバブル期超えを達成し、正社員の有効求人倍率も初めて1を超え、1.01倍となりました。労働力調査でも、正規の職員・従業員は前年同月に比べて68万人増えています。非正規は23万人増となっており、正規の方が上回っています。雇用環境については、「正社員時代の到来」といえるかもしれません。ちなみに就業者全体では61万人増となっており、自営業から雇用者への転換が進んでいます。また失業率も2.8%と3%を切っています。いわゆる完全雇用状態です。

 この状況はどこまで続くのでしょうか?7月初めに公表された日本銀行・短観の雇用人員判断DI(過剰と答えた企業の割合-不足と答えた企業の割合)は、▲25%ポイント(▲はマイナス、以下「%ポイント」は省略)と企業の不足感を示しています。先行きは▲29と人手不足がさらに深刻化するとみています。特に先行きについて建設▲42、運輸・郵便は▲44、対事業所サービス▲40、宿泊・飲食サービスは▲60、と全体よりも不足感が深刻といえそうです。18年度の新卒の採用計画も全体では8.1%増と17年度の5.7%増からさらに加速しています。業種別では、建設が11.4%、情報サービスが10.0%、対事業所サービスが23.6%、製造業では電気機械が16.0%などと大幅増を計画しています。

 団塊世代が現役から去ってから初めて景気回復感を実感しているのが足元の状況です。人手不足が生産・サービス活動の制約になることに、ようやく個々の企業が気づき始めたようです。長期的な事業基盤を支える人材の確保に乗り出した姿が表れています。この動きがイノベーションの活性化、生産性の向上をもたらし、賃金上昇に結びつけば本格的な景気回復、日本経済の復権への道が開けます。「失われた30年」と日本が揶揄(やゆ)される事態を避けられる可能性が、少しは出てきたのかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)