日経キャリアNET

ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

数字を読み解く

医療・介護分野でも必要なIT能力

医療・介護分野でも必要なIT能力

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は日本経済研究センターが3月下旬に公表した産業調査「高齢者の医療・介護を考える」を中心に紹介します。政府の推計によると2025年には、65歳以上人口の割合(高齢化率)は3割を超えます。国民医療費の伸びは名目国内総生産(GDP)の伸びを上回り、15年度から25年度にかけて45兆円から60兆円に、介護保険給付費は10兆円から10兆円以上増加すると見込まれています。当センターの中期経済予測をベースに推計すると、医療・介護に携わる就業者を現在よりも新たに320万人確保する必要があります。

 構造的な人手不足の実態は雇用面にすでに表れています。17年2月の有効求人倍率は1.43倍、新規求人倍率は2.12倍と非常に高い水準で推移していますが、なかでも医療・福祉の新規求人状況は21万6700人(前年同月比5.2%増)を超え、主要産業で最も多い求人数になっています。16年度の平均(16年4月-17年2月)でも新規求人数は、前年同期に比べ7%増加しています。

 しかし賃金面では恵まれていません。2010年を100とした場合の15年度の水準は99と下がっています。卸売・小売、宿泊・飲食以下です。人手不足が同じように問題視されている運送業は10年比で102と2%増になっています。公的制度で支えられている医療・介護は、市場の需給を反映した賃金の上昇は、簡単には起こらないからです。賃金上昇がないので、人手不足が続くという悪循環に陥っています。

 人手不足解消には生産性向上は欠かせません。介護の職場環境を改善し、人手不足解消を目指した介護向けのロボットやIT(情報技術)の実証については、すでに始まっています。4~5年内にはロボットの利用が介護保険適用になる可能性もあるでしょう。介護関係者にヒアリングすると、機器の導入にはITの専門知識を持った人材も必要とのことです。ITは汎用性の高い技術としてあらゆる分野で求められる21世紀の「読み・書き・そろばん」のようです。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)