ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

数字を読み解く

景気、回復基調も内需に明るさなく

景気、回復基調も内需に明るさなく

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 3月は日本経済研究センターの最新の短期経済予測を紹介しつつ、当面の景気について考えたいと思います。日本の短期的な景気を左右するのは、今や米国、中国の経済動向です。自律的な内需は、極めて弱いからです。

 まず米国の状況は、トランプ大統領が一般教書演説で10年間に1兆ドルのインフラ投資を表明したこと、軍事費が大幅増額の方針であることなどもあり、景気は拡大するとしています。16年の1.6%成長が17年には2.4%成長へ加速すると予測しています。また中国も資本流出問題など経済に不透明感が漂っていた16年も6.7%成長を維持しました。

 李克強首相は全人代で17年の経済成長目標を6.5%と表明しましたが、当センターはやや弱めの6.3%成長に減速するとしています。過剰債務・過剰設備問題を抱えつつも、この程度の成長率を維持できるのであれば、急激な調整に入ることはなさそうです。

 米中は日本のNo.1、No.2の輸出相手国なので、急激な円高にでも見舞われない限り、17年度の実質輸出は3%近い伸びを示すでしょう。米連邦準備委員会(FRB)は、利上げに前向きの姿勢を示しており、一方、日本はマイナス金利政策から簡単には抜け出せそうもないだけに、円高リスクは小さいとみるべきでしょう。

 足元でも輸出の基調はよいのですが、内需は芳しくありません。先月も触れましたが、16年の名目賃金は前年比0.5%増です。「この程度の賃上げでは社会保険料の引き上げや生活必需品、食料品の値上がりで消えてしまう」と実感する人は、私の周りには少なくありません。

 当センターは、17年度の個人消費は16年度よりも基調は強いとしていますが、それでも1%増にとどまっています。1月の有効求人倍率は1.43と人手不足状況が固定化していますが、賃上げは限定的でしょう。人手不足が生産性の比較的低い業種で発生しているからです。

 日本経済全体は、17年度は16年度と同じく外需にけん引され、1.2%成長になると予測していますが、トランプ政権が本格的な保護主義に陥らねばという話です。保護主義から貿易戦争という事態になれば、1%程度の成長など消し飛んでしまいます。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)