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数字を読み解く

同一労働・同一賃金が終わらせる社内訓練

同一労働・同一賃金が終わらせる社内訓練

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 政府は昨年12月下旬に働き方改革の目玉となる「同一労働・同一賃金」の実現に向けた指針を公表しました。正社員の60%程度とされる非正規社員の賃金を正社員並みに引き上げることを目指しています。非正規は雇用者の約4割を占めていますが、待遇改善によって雇用・賃金の拡大、消費回復への軌道に日本を乗せる狙いです。実現できれば、日本の課題である生産性向上にも、中期的には確実に結びつくと考えられます。

 ただし実現には、大きな壁ともいえる課題があります。終身雇用・年功序列型の雇用賃金体系と「同一労働・同一賃金」は水と油です。日本の大企業の雇用体系は新卒を一括採用し、社内教育・訓練を中心に育成し、転勤や異動によって多様な能力を身に付けさせるシステムです。長期雇用が前提であり、可能な限り雇用は守るという経営が基本です。外資や新興のIT(情報技術)企業では、そうした慣行はないでしょうが、伝統的日本企業は今なお、社員も経営者も「疑似家族」といえます。だからリストラを実施するときは、業績悪化の責任よりも「家族を家から追い出すから自分も出て行く」というマインドで経営責任を感じる経営者も少なくないでしょう。
 一方、「同一労働・同一賃金」は賃金を生産性に基づき、支払う仕組みです。企業が課すべき仕事を定義し、成果目標を明確にし、社員は「家族」ではなくプロとして扱うわけです。正規、非正規に関わらず成果に基づいた報酬を支払うわけですから、成果を伴わない長期的な社内教育・訓練は、ほとんど入る余地はありません。

 第4次産業革命の先頭を走る世界のグローバル企業では「同一労働・同一賃金」は、すでに当たり前になっています。政府の旗振りも相まって、日本企業も変化していくでしょう。就職先企業が必要な職業教育をしてくれる時代は、意外に早く終わるかもしれません

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)