ビジネスパーソンのキャリアアップ・転職について考えるニュース・コラムサイト

数字を読み解く

観光は新成長産業

観光は新成長産業

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は12月7日に公表した日本経済研究センターの産業調査を紹介したいと思います。訪日外国人は2016年には約2400万人になり、旅行収支(外国人の日本国内旅行での消費額-日本人の海外旅行の消費額)は、1兆円を超える黒字になりそうです。訪日客の消費単価は減少傾向にありますが、旅客数は急増しています。米国のトランプ次期大統領が公約とする金融規制や環境規制が緩和し、インフラ投資の拡大が実行すると、円安、世界的な株高、世界経済の拡大が当面は続くでしょう。

 そうした追い風があれば、政府が掲げる「20年までに訪日客4000万人」という目標も達成可能といえます。当センターは20年には4000万人をわずかに上回ると考えています。旅行収支の黒字は3兆円を超え、赤字基調のサービス収支(旅行や輸送のほか、知的財産権などの海外とのやり取りの合計)は黒字基調に転換する可能性も高いと思います。この20年間、課題とされていた新たな成長産業の育成ですが、今や「観光」は、その主役といえます。
 ただ4000万人の受け入れの収容能力には課題があります。東京・大阪などの都市部では現在、客室稼働率が80%を超え、満室状態です。4000万人を受け入れると部屋数が1万室以上足りない状態です。もちろん東京五輪・パラリンピックなどの需要を見込んだホテルの新規建設計画は5万室以上あるとされていますが、どこまで実行されるのか、定かではありません。

 理由の一つは、人手不足が深刻だからです。最新の一般職業紹介状況では、建設業の新規求人数は9月が前年同月比10.2%増、10月が1.0%増と基本的に増加基調です。さらに宿泊業や飲食業は、この1年間をとると平均2ケタ増で新規求人数が増えています。高齢化社会の加速で慢性的に人手不足と言われる医療・福祉を上回る人手不足状態といえます。この状況ではホテルを建設したくても当初計画通りに順調な建設ができるのか?また十二分なサービスを提供するための質の高い従業員確保が可能なのか?不安があります。
 ただ東北地方だけは訪日外国人増の恩恵をほとんど受けていません。足元でようやく東日本大震災前の水準に戻ったに過ぎません。4000万人の実現には、世界遺産の白神山地など豊かな自然の魅力をもっと海外にアピールする必要があるかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)