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数字を読み解く

海外経済にリスク、不透明感強まる

海外経済にリスク、不透明感強まる

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今月8日に公表した日本経済研究センターの最新の短期経済予測の内容を紹介したいと思います。4-6月期の経済成長率(実質GDP成長率)は前期比0.2%増と1-3月期の同0.5%増よりは減速しましたが、何とかプラス成長を維持しました。景気は強くはありませんが、“ぬるい”状況が続いています。こうした状況を受け、当センターの短期予測は16年度・0.7%成長、17年度・0.9%成長と予測しています。

 ただ7月の失業率が3.0%と完全雇用水準が続いていますが、今春の春闘の賃上げ率が15年に比べて低下しそうであること、円高に伴う企業収益の減少が見込まれることから17年の春闘も大幅上昇は見込みにくく、個人消費が本格的に増加する可能性は小さいとしています。9月1日に公表された法人企業統計では4-6月期の全産業の売上高は前年同期比3.5%減、経常利益は同10.0%減になっています。企業業績の悪化はすでに始まっています。雇用がよくても賃金に反映されにくい状況がしばらく続くようです。もう一方の内需の柱である設備投資ですが、4-6月期のGDPベースの設備投資は前期比0.1%減とすでにマイナス基調になっています。16年度の設備投資は0.5%増、17年度は1.3%増と予測しています。

 消費、投資ともプラスは維持しますが、これには留意が必要です。“ぬるい” 状況が続けば……、という前提です。短期経済予測は、国内よりも海外にリスクがあることを指摘しています。英国のEU(欧州連合)離脱の影響や米大統領選の行方、欧州の金融不安再燃、米国の利上げに伴う新興国市場の混乱、過剰設備、過剰債務が原因となる中国経済のハードランディング――など多くの海外リスクを上げています。

 すでに米大統領選挙の行方に関わらず、TPP(環太平洋経済連携協定)の発効は「風前の灯火」といえます。世界のリスクが高まっているときであればこそ、日米がヒト・モノ・カネの市場開放に積極姿勢を見せて世界経済の不安解消へ対処するべきだと考えるのですが、現実は市場や国境を閉鎖しようという動きの方が強いようです。16年度後半以降は、今よりも先行きの不透明感が高まる可能性が高いでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)