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数字を読み解く

規制改革こそ、アベノミクス再始動

規制改革こそ、アベノミクス再始動

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 安倍晋三首相は、事業規模28兆円の経済対策を決めました。ただ必要性も効果も極めて疑問です。6月の有効求人倍率は1.37倍となり、90年代前半並みの高い数字です。正社員も0.88倍と04年11月に正社員の有効求人倍率の調査が始まって以来、過去最高です。完全失業率も3.1%と前月よりも0.1ポイント改善しており、現状は完全雇用状態です。財政出動は需要不足への対策であり、完全雇用のときに実施しても、供給側の制約に直面し、結局は輸入が増えるだけになるでしょう。例えば、低所得者向けに1人当たり1万5000円を給付するとの方針ですが、消費がその分増えても、輸入が増えるだけという可能性が高いです。また現金給付された分が消費に回らず、貯蓄になると消費そのものが増加しない恐れもあります。

 なぜ、不況感があるのでしょうか。実質賃金は16年に入り、少し上がり始めましたが、2000年代は下落傾向が続いています。1人1人の所得が増えないことが不況感に直結しています。「儲からない非効率な仕事を一生懸命にこなしている」のが、今の日本。「儲からない産業」から「儲かる産業」へシフトし、日本全体の生産性を向上させることが重要で、それには規制改革の強力な推進が不可欠です。経済対策の中の観光インフラ整備などはインバウンド拡大につながる生産性向上のための投資といえますが、それ以外は大変、心許ないです。民泊は営業日数や連泊の条件制約で骨抜きになりそうです。スマホを活用した配車サービスのウーバーは、地方でしか実験が許されていません。シェアリング・エコノミーは世界では急拡大しつつあり、成長産業への期待が高いですが、日本では規制の壁に阻まれそうです。

 アベノミクス再始動は、環太平洋経済連携協定(TPP)を一日も早く批准することからだと思います。国内外からさまざまな分野へ自由に参入できるように向けた環境整備の第一歩になるからです。総務省はICTへの投資とフル活用で20年度までに33兆円のGDP押し上げ効果が期待できると分析していますが、フル活用には業務や雇用制度の抜本改革が不可欠です。政府の目指す同一労働・同一賃金はICTフル活用実現に必要な条件であり、こちらにも全力を注ぐことが望まれます。生産性が向上しないと結局、所得が増えるという実感のない求人ばかりが増えることになります。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)