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数字を読み解く

医療・介護以外、あらゆる産業で雇用減少

医療・介護以外、あらゆる産業で雇用減少

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 2030年度までに735万人の雇用が失われる――。4月末に経済産業省は、人工知能(AI)やロボットなど情報通信技術(ICT)の進化・普及が産業構造や就業構造にどのような影響があるか、試算を公表しました。今回はこの試算を中心に将来の就業構造について考えてみます。

 従来はICTの進展でなくなる職種や雇用の増加などについて予測した分析がありましたが、雇用人数の増減について経産省が言及したことは意義深いことです。

 ICTによって製品・サービスの内容が大きく変わろうとしている現在の状況は、第4次産業革命と呼ばれています。IBMのAI「ワトソン」、グーグルの自動運転システムや「アルファ碁」が有名です。金融業界で実用化されたり、高速道路をドライバーなしで走行できたり、最近では世界トップ級のプロ棋士に勝利しました。限定的な作業では、人間を凌駕している分野も少なくありません。

 経産省は、製造ライン工員や銀行窓口係などはAIに置き換えられていくとみています。全産業にわたり、対応を誤ると786万人の雇用が失われると予測しています。例外は医療・介護など(51万人増:政府、教育部分も含む)になっています。

 当センターの最新の中期経済予測では人口減少・高齢化の進行を受けて、労働力人口全体が30年度にかけて400万人減るとみています。差し引きすると380万人強の雇用が失われるということです。ただ51万人雇用が増える医療・介護などは、少なめの予測に思えます。日本は世界一の速さで高齢化が進んでおり、当センターの中期予測では500万人の雇用増になるとみています。

 こうした予測は幅を持ってみないといけませんので、経産省の予測で失われる300万人強の雇用は、医療・介護分野の増加へ吸収されると考えても無理はないと思います。足元の一般職業紹介状況のデータをみても、医療・介護関連は一貫して求人が増加しています。すでに雇用シフトが始まっています。

 これは憂慮すべきことかもしれません。マクロ経済的な視点でみると、生産性が必ずしも高くない分野へ産業の重心がシフトし、低賃金の仕事だけが増えていく状況が30年度まで継続するわけです。イノベーションが我々にICTへ対応できるスキルを身に付けることを迫っているといえます。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)