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数字を読み解く

賃上げよりも内部留保――企業の本音

賃上げよりも内部留保――企業の本音

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 政府は著名な国内外の経済学者を官邸に招いて世界経済情勢の分析を始めています。ジョセフ・スティグリッツ米コロンビア大教授、デール・ジョルゲンソン米ハーバード大学教授、ポール・クルーグマン米ニューヨーク市立大学教授――ノーベル経済学賞受賞者あるいは、いつ受賞してもおかしくないメンバーが集められています。当センター理事長の岩田一政も国際金融情勢について意見を問われました。中国や新興国の経済停滞によって世界経済が厳しい状況にあることをそれぞれの立場から訴えたようです。

 さらに世界経済の低迷によって化石燃料価格が現在のような水準(原油価格が1バレル30~40ドル)で推移すると、産油国発で経済危機が勃発してもおかしくありません。シェールガスやシェールオイルを開発するベンチャー企業は高利回り債券(ハイ・イールド債)で資金調達していることも多く、原油価格の低迷はこうした企業を直撃します。こうした企業が破綻すると、好調を維持する米国にすら不安があるのです。

 世界に立ちこめる暗雲で企業行動も変化しています。2月の失業率は3.3%、有効求人倍率は1.28、正社員も0.81と相変わらず完全雇用状態が続いています。しかし内閣府と財務省が3月11日に発表した第48回法人企業景気予測調査をみると、様相が一変します。2015年度の利益配分のスタンスを重要度の高い順に回答をみると、比較的賃上げの余力がある大企業では、「従業員への還元」が上位3位に入っていません。「内部留保」が設備投資、株主への還元に続いて第3位に入っています。

 同調査の「従業員数判断」では規模、製造・非製造業を問わず不足感が継続していますが、賃上げには消極的です。調査を裏付けるように、連合のまとめでは、今年の春闘の結果は昨年を下回っています。官民対話で安倍晋三首相が強くに賃上げを求めたにも関わらず、企業側は「賃上げよりも内部留保を手厚く」というのが本音のようです。

 政局がらみで17年4月からの消費増税が予定通り実施されるか否か、ばかりに話題が集まっていますが、世界の賢人たちの警告は「国際協調で世界経済危機に備え、その勃発を防げ」というものではないでしょうか。それが雇用も賃上げも実現する王道のような気がします。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)