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数字を読み解く

景気下振れリスク高まる

景気下振れリスク高まる

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今回は2月16日に公表した当センターの短期経済予測を中心に日本経済の先行きを見通してみます。年明けから新興国経済の不振に端を発した資源価格の下落、世界的な株価の急落で日本経済は、景気が下振れするリスクが高まっています。日銀が公表する実質輸出は15年12月に前月比3%減、1月も同0.4%減です。2月上旬段階の貿易統計から予測すると、2月も減少する可能性があります。新興国の不振は国内の実体経済にもすでに暗い影を落としています。短期予測では15年度の経済成長率は0.7%、16年度は消費税(17年4月より10%へ引き上げ予定)の駆け込み需要を見込んでも1%成長にとどまるとしています。

 この予測も楽観的かもしれません。短期予測は足元の1-3月期をゼロ成長と見込んでいますが、15年10-12月期に続いてマイナス成長になる恐れもあります。3月1日公表の法人企業統計では製造業の15年10-12月期の経常利益は前年同期比21.2%減になりました。全産業でも同1.7%減です。オリンピックに向けた建設投資がある建設業、訪日外国人の「爆買い」需要に支えられた小売業などが現段階では好調を維持していますが、輸出減から製造業が本格的な不振に陥れば、非製造業への負の波及は避けられません。少子高齢化が加速する日本では、自律的な内需の発生は、経済構造の大改革なしには期待できないからです。輸出の不振は国内経済の悪化に直結するのが、今の日本です。

 1月の失業率は3.2%に下がり、有効求人倍率は1.28、正社員も0.8と完全雇用状態が続いています。しかし求人数の状況を詳細にみると、製造業や情報通信業という主要産業では前年同月比でマイナスに転じています。宿泊・飲食(13.4%増)、医療・福祉(4.5%増)など非常に高い伸びがある分野に支えられた有効求人倍率の高さです。「爆買い」と「超々高齢化」で雇用が発生していますが、この分野の賃金は高くなく、所得環境の改善なき、雇用改善といえるでしょう。この状況下で製造業の不振が加わるようなことがあると、所得が伸びないだけでなく雇用情勢も悪化することは避けられないでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)