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数字を読み解く

世界経済低迷、賃金増の足かせに

世界経済低迷、賃金増の足かせに

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 日本銀行は1月末にマイナス金利政策の導入を決めました。円高の進行、資源価格の暴落、世界同時株安ともいえるような状況でデフレ脱却と景気の下支えを確実なものにするためです。

 確かに昨年12月の経済指標は景気の停滞感を占めすものでした。暖冬の影響もありますが、家計調査の実質消費支出は、前年同月比4.4%減、鉱工業生産指数は前月比1.4%減(前年同月比1.6%減)でした。輸出数量は、中国や新興国経済の低迷を受けて6カ月連続の減少が続いています。

 2015年は化石燃料価格の下落による交易条件の改善だけでも、年間約9兆円以上の恩恵が国内にもたらされましたが、その効果も輸出減で打ち消されています。

 好調だった米国も、15年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率換算で0.7%増(前期比に直すと約0.17%でほぼゼロ成長)となり、減速感が表面化しています。12月のマイナス金利政策には賛否両論ありますが、打てる手はすべて打つということでしょう。

 特に米国は、長期の景気拡大が続いていますから、景気循環の視点でみると、景気後退局面に入っても不思議ではありません。中国の低迷に端を発した新興国経済の低迷、資源安、さらなる新興国の低迷という悪循環が続くところへ米国の景気後退が加わると、日本への影響は避けられません。

 今のところ、雇用は絶好調が続いています。12月の有効求人倍率は1.27とリーマンショック前の水準を完全に追い抜き、1990年初頭のバブル期に迫る勢いです。失業率は3.3%と完全雇用状態のうえ、女性の就業率も上昇し、15年1年間では過去最高の64.6%になりました。

 しかし産業分野でみると、ちょっと景色が違います。医療・介護の就業者が年間27万人増と圧倒的です。一方で生産性が高く日本を支える製造業の就業者は5万人減少しています。高齢化の加速によって雇用を生まれていることがうかがえますが、主要産業では雇用が創出していません。

 ここに米国の景気後退が加わり、世界経済が一層低迷すると、雇用は増えても実質賃金は増えないという現状への足かせが一層重くなることは確実です。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)