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数字を読み解く

雇用に大きな影響を及ぼすGDP 移民を含め外国人の受け入れは不可避

雇用に大きな影響を及ぼすGDP 移民を含め外国人の受け入れは不可避

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 政府は「1億総活躍社会」実現に向けた2016年度予算を決め、4日から国会論戦に入りました。1億総活躍の柱は、GDP600兆円の実現、出生率1.8への引き上げ、介護離職ゼロという「新3本の矢」ですが、その中でもGDP600兆円の実現の可否は雇用にも大きな影響があります。

 GDP600兆円を2020年ごろに実現するには生産性向上はもちろん、成長力の根幹を担う労働力人口の減少に歯止めをかける必要があります。生産年齢人口は年間100万人近く減少しています。日本経済研究センターの中期経済予測の推計では、放置すると2030年度には労働力人口が500万人減少し、成長率を0.5%以上押し下げます。この推計は女性をフル活用することを前提にしています。フル活用してもこれだけ減るのです。また足元の失業率は3%台前半と完全雇用状態です。この状況から労働力人口を増やすには移民を含めた外国人の受け入れは避けられません。

 特に生産性も高めてくれる若い高度な人材は世界的に奪い合いの状態です。日本よりも生活水準が必ずしも高くないアジア諸国の人材であれば日本に来てくれると考えるのは早計です。終身雇用(長く務めないと報酬が増えない)を前提とした雇用制度や文化、日本語など、乗り越えないといけない壁は米国に比べて高く、若い高度な人材にとって必ずしも魅力的な国ではないのです。

 日本の労働力人口は減少するだけでなく、急速に高齢化し、生産性の低迷につながる可能性も高いのです。生産性の低迷は競争力を低下させ、新たな産業を興りにくくします。雇用拡大だけでなく、実質賃金の上昇の機会も失う結果になります。生産性向上のためにも高度な人材を中心とした移民の受け入れは、中期的には不可避だと思われます。1990年代から日本企業は本格的に海外進出しましたが、次は内なるグローバル化が課題でしょう。外国の文化を学び、英語をはじめとする外国語を習得することは、条件のよい転職や就職の必要条件になっていくでしょう。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)