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数字を読み解く

2020年をメドとする「1億総活躍社会」解決策をどこに見いだしていくのか

2020年をメドとする「1億総活躍社会」解決策をどこに見いだしていくのか

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 新アベノミクス「1億総活躍社会」実現に向けて、政府は10月末から動き始めました。2020年頃まで名目3%(実質2%)の経済成長を継続し、GDP600兆円の実現しつつ、出生率も1.8まで引き上げ、介護離職もゼロにしようという大変結構なお話だと思います。
 しかし実質2%の経済成長を実現するには、生産性の大幅な引き上げとともに労働力人口の減少に歯止めをかけないとできません。現在、女性の就業率はどんどん上昇しており、日本で指摘されていたM字カーブ(20歳後半から30歳半ばの女性の労働参加率が低いこと)は解消します。2030年には北欧並みになるペースです。ただ、このペースでも改善しても2020年代からは労働力人口は減り続けます。現状の2~3倍に生産性を向上させないと減り続ける労働力人口をカバーできず、成長力(潜在GDP)を2%に高めることはできません。
 出生率を1.42から1.8まで高めることは、より一層困難です。M字カーブ解消はよいことですが、女性は働くことを優先し、晩婚化がどんどん進んでいます。30歳代で独身などというのは、東京では珍しくありません。M字カーブ解消の代償に少子化の改善は望めそうもありません。むしろ進行しても不思議ではないでしょう。そもそも出生率が1.8では人口は減り続け、前提とする2060年に人口1億人維持は達成できません。
 介護離職ゼロの実現も難しそうです。誰が介護を担うのでしょうか? 2030年には75歳以上人口が2割を占めるなかで、日本経済研究センターは医療・介護に1000万人以上(就業者の5人に1人)の就業者を確保する必要があると試算しています。医療・介護分野の生産性は製造業や情報産業よりも生産性は低いため、600兆円達成に不可欠な生産性の向上とも矛盾します。
 有効求人倍率も完全失業率も完全雇用状況を示し、問題はないようにみえますが、中長期に女性の就業率を高めつつ晩婚化をさけ、さらに生産性の低い(すなわち待遇のよくない)介護分野への就職・転職が望まれるという難題を日本は抱えているわけです。 安倍首相はどのように解決しようとしているのでしょうか?その処方箋次第で雇用環境は一変する可能性もあります。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)