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数字を読み解く

雇用環境が好調を持続するなか、情勢のピークは果たしていつまで

雇用環境が好調を持続するなか、情勢のピークは果たしていつまで

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 2015年度に入り、景気は停滞していますが、雇用情勢や企業収益の状況と乖離しています。
 6月の鉱工業生産は前月比0.8%とわずかにプラスになりましたが、5月の反動という要素もあり、4-6月期では前期比1.5%減になっています。耐久消費財は前期比4.0%減、設備投資の動向が表れる資本財(除く輸送機械)は同0.8%減でした。生産(供給)面からみると消費も投資も伸び悩んでいます。需要サイドの統計をみると、消費の低迷は、より明らかです。6月の家計調査は実質で前年同月比2.0%減でした。名目では1.5%減だったので、消費者物価の上昇が個人消費に影を落としているようです。

 小売業の販売額は15年度に入って順調ともいえる伸びを示していますが、これは外国人の爆買いが小売業販売額には含まれているからと考えられます。デフレが解消しつつあることは望ましいことですが、物価上昇による実質賃金の低下は、消費低迷にもつながりかねず、足元ではマイナス面も無視できません。また輸出も相変わらず、数量は伸び悩んでいます。

 一方、雇用環境は好調が続いています。6月の有効求人倍率は1.19と前月と同じく高い水準を維持しています。正社員も0.75と好調を持続しているといえるでしょう。失業率も3.6%と前月比0.1ポイント悪化しましたが、完全雇用状態であることに変わりありません。また企業業績も絶好調なようです。日本経済新聞は、円安の追い風を受けて上場企業の7割が4-6月期の経常利益が増益となり、利益水準も前年同期比で3割近い増加になっていると報じています。

 この景気の実態と雇用情勢、企業収益の状況との乖離は持続可能なのでしょうか。人口減少による内需の低下は、中期的には避けられないと見られます。輸出における円安の価格効果、エネルギー価格の下落による交易条件改善も、企業競争力を強化した結果ではありません。両者が一服すると、その効果は止まります。雇用情勢のピークはそう長くないかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)