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数字を読み解く

人手不足に対応する日本企業の行動パターンは変わらず、賃金がなかなか上がらないという状況の変化は期待薄

人手不足に対応する日本企業の行動パターンは変わらず、賃金がなかなか上がらないという状況の変化は期待薄

 転職に関わる代表的な指標としては、厚生労働省が公共職業安定所における求人、求職などの状況をまとめた「有効求人倍率」、総務省が全国約4万世帯を対象に行う労働力調査から明らかになる状況をまとめた「完全失業率」などが挙げられます。これ以外にも、景気判断などの基軸となる指標は数多く発表されています。
 新聞やテレビの報道で毎日のように耳にしたり、目に止まったりするだけに、ビジネスのみならず転職を検討、実行するうえでも注目しておきたい数字。このコラムでは日本経済研究センターの専門家による独自の視点で、統計や指標などで示される様々な数字を、雇用情勢に照らし合わせて読み解いていきます。

 今月は6月8日に公表した日本経済研究センターの短期経済予測の内容から今後の雇用・賃金環境を考えます。2015年度の完全失業率は14年度の3.5%から0.1ポイント低下し、3.4%、16年度も3.3%と予測しています。有効求人倍率も14年度の1.11から15年度1.16、16年度1.18となり、完全雇用の水準が継続するでしょう。

 しかし完全雇用状況にも関わらず、1人当たりの名目賃金は0.9%増、0.5%増にとどまるとしています。一方、15年度の消費者物価は0.3%上昇、16年度は原油価格の上昇を見込み1.1%増となっています。

 この予測では16年度には再び実質賃金は低下してしまいます。賃金を上げず、非正規社員の増加で当座の人手不足には対応する日本企業の行動パターンは変わらないと考えているわけです。 企業の収益環境はというと、賃金・雇用環境に比べると大きく改善しそうです。経常利益は15年度7.9%増、16年度7.3%と予測しています。原油価格上昇によるコスト増よりも、円安の継続による経営環境の改善効果の方が大きいと判断しています。

 日本経済新聞の調査では、収益環境の改善によって15年度は全産業の設備投資は10%を超えるとの計画になっています。投資はしても賃上げには必要最小限しか回さないという姿勢がうかがえます。

 直近に公表された足元の経済データも、当センターの予測に沿った動きになっています。6月1日に発表された法人企業統計では14年度の経常利益率は0.2ポイント改善して5%に達しました。円安の恩恵を受けた製造業は0.4%ポイント改善し、6%を超えました。

 一方、2日に公表された毎月勤労統計では15年4月の実質賃金が前年同月比で0.1%増にしかなっていません。14年度の実質賃金はもちろんマイナスです。雇用者数は増えても非正規で充当するケースが多いことも事実です。正社員の有効求人倍率は高い水準ですが、「されど賃金はなかなか上がらない」という状況はしばらく続くかもしれません。

(日本経済研究センター・主任研究員 小林辰男)